1級販売士 記述式問題講評(第32回)






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1級販売士 記述式問題講評(第32回)

第32回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第32回1級販売士検定における記述式の講評

1.商品計画と商品予算

単語だけ書いて、その説明が全くない解答がかなりありましたが、記述式の問題で、“簡潔に記入しなさい”との指示がある以上は、減点せざるを得ませんでした。在庫投資、仕入業務、販売や店舗にもたらされるメリットやデメリットというように、きちんとした視点に基づいて3項目を示してほしかったと思います。というのは、ほとんど類似した項目をほんの少し違えて3つ示した人もいましたが、記述式問題の解答としては適切とはいえないからです。

さらに、商品回転率について説明しながら、高回転がもたらす影響についてほとんど書いていない解答もありました。カテゴリー・マネジメントに関しては、それを全く理解していないと思われる解答が残念ながら結構ありました。カテゴリー・マネジメントでなくても、当てはまってしまうコストや作業量の増大について言及している解答が相当数ありました。解答として問題点の指摘が求められているのに、課題で終わり、弱点や限界についての説明が全くない解答もありました。

カテゴリー・マネジメントそのものやその長所を説明しながら、問題点の指摘がほとんどないものや、問題点を単語のみで示し、どうしてそのような問題が生じるのかについての説明がない解答もありましたが、いずれも記述式の問題の解答としては適切とはいえません。論理的に記述する力の育成がもう少し必要と思います。

2.仕入計画と在庫管理

正確に理解している人と問題の要求点を勘違いしている人との間に大きな点差をつけざるを得ませんでした。

商品検査表を用いたユニットコントロールの方法とその長所ならびに短所を記述するようにと設問に明記しましたが、商品検査の方法とそれに内在するメリットやデメリットを記述している人がかなりいました。問題の要求点を正しく理解してから、解答を作成するようにしてほしいと思います。商品検査表を活用した棚卸は、現品棚卸の簡便方法であり、標準あるいは基準在庫量との対比に基づいて、短いインターバルで在庫をチェックし、追加仕入の数量を決定する方法であるのに、ユニットコントロールの方法とダラーコントロールに対するメリットやデメリットを説明していた解答がかなりありました。

流行品や季節商品の仕入に関しては、比較的よくできた解答が多かったように思われます。商品特性については、かなりよく書けている解答が多かったようですが、仕入についての記述が欠けている人が残念ながら多くいました。さらに、OTBは安定的に売れる商品には適していますが、季節変動が大きい商品には不向きであるのに、この点を誤解している人が結構いました。「売上の変動に適合した仕入や在庫管理をする必要がある」とのみ記述し、その具体的な内容に触れていない解答もありました。

3.経営とマーケティング

第5問は、環境配慮に関する取り組みを、小売業の視点から具体的にどう理解しているかを問うものでした。リサイクル、リデュース、そしてリユースに関して、それぞれの活動事例を明確に解答できたものも多かったのですが、その一方で、一般的な説明、個別のリサイクル法を挙げたもの、また、白紙の解答や珍答もありました。日頃から、販売側の立場からだけでなく、消費者側の立場からも、身近な環境活動に関心を持つことを、改めて考えて欲しいと思います。

第6問は、サービス・マーケティングの基本的な考え方について、顧客満足、顧客ロイヤリティ、従業員満足、従業員ロイヤリティの4つのキーワードを使い、自分の言葉で説明することができるかどうかを問うものです。ハンドブックを勉強している人にとっては、ある程度予想できた問題だと思います。解答としては、インターナルとエクスターナルの側面から的確に論じているものも多く、評価は高くしました。しかし中には、ハンドブックの内容をそのまま丸暗記したような文意が不鮮明な解答、キーワードを省略し、長々と意見を述べた解答、また、4つのキーワードを掲げただけで、説明不足の解答などもありました。小売業として実務の中核に据えられる考え方ですから、常に、売り場を想定して自分の解釈を覚醒することの必要性を感じました。

第7問は、例年共通のことですが、白紙の答案が多いことが目立ちました。本問題は、いわば法律以前の、近現代法の基礎的な原則についての理解を問うものです。ほぼ完璧な回答も多数ありましたが、反面、多くの字数を費やしながら、全く的外れな回答が多かったことは、残念な結果です。

われわれの社会が、自由主義を基調としていること、市場原理、自由競争、規制緩和、自己責任等々は、その延長線上で捉えられるべきものであること、「過失責任の原則」は、その自由主義を民事法の分野で担保する原理原則であることを理解する必要があります。「過失責任の原則」とは、故意の場合に責任を問われることは当然のこととして、「過失がない限り、どのような重大な結果が生じようとも、自己の行為について責任を問われることはない」という原則であり、その結果、相応の注意をしさえすれば、行動の自由が保障されることを意味するからです。

なお、回答として必要十分な範囲を超え、積極的に間違いを書き加えて減点となった回答が散見されました。

4.経営計算

第6問は、小売業に限らず、全ての株式会社における利益処分の項目と記載(表示)方法に関する理解を問う問題です。利益処分の意味自体が学習されておらず、社外流出項目と内部留保項目に大別されることを全く理解していない解答が目立ったことは残念でした。

第7問は、連結キャッシュ・フロー計算書を分析する場合に、その前提となる資金の範囲についての理解を問う問題でしたが、「連結の範囲」に関する問題と誤解ないし、混乱した解答が非常に目立ちました。キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲は、現金そのものだけではないこと、売買目的有価証券のような価格変動のリスクがある短期投資は含まないことを明示していることが解答のポイントです。

両問題について十分に学習したことがうかがえる非常に正確な解答も多数あったことを指摘しておきたいと思います。しかし、一方で、漢字で書かれていない解答や言葉のイメージだけで勝手な解釈を示した解答も少なくありませんでした。

5.市場調査と立地分析

第6問は、「騒音」や「廃棄物処理」「住民説明」等、大店立地法の全体像についての解答が多くみられましたが、設問の趣旨は、大店立地法指針の「交通」に係る配慮事項について解答を求めるものです。キーワードは、駐車場の「必要台数」並びに「位置と構造」「駐輪場」「荷さばき施設」「経路設定」の5つです。
駐車場についてはよく解答されていましたが、その他のキーワードについては解答状況が低調でした。大店立地法の実際の法運用においては、交通問題が最も重要視されることが多く、駐車場は最重要問題ですが、駅前などでは駐輪場、住宅街や周辺道路状況の悪い地域では荷さばき施設、交通渋滞が起きやすい地域では経路設定も非常に重要です。

第7問は、満点の解答が多かった反面、白紙の解答も目立ちました。出題予想の当たった人は高得点しましたが、はずれた人は白紙または全く関係ない解答をしています。

ネルソンの8つの原則の一つである「商圏への接近可能性」についての設問ですが、「中間阻止性」や「累積的吸引力」「両立性」などについての解答も多くみられました。

正解の3つの店舗タイプ分類のように、実際の小売店舗はきれいに3タイプに分類されるわけではなく、ほとんどの店舗が3つのタイプのうちの複数要素を持ち合わせていることも忘れてはなりません。そして、店舗の近くをどれだけ多くの人が行き来するか、もしくは店舗近隣の世帯数や人口などが商圏内購買力吸引に大きく影響します。

6.組織と人事管理

第6問は、事業部制組織の短所を3つあげるものです。ハンドブックでは5つ記載してありますから、この中の3つを解答すれば良いので、それほど難しい問題ではなく、得点も比較的に良かったようです。答案用紙は、各々について2行にわたって記入するようになっていましたが、多くの方が1行の非常に短文で記述していました。やはり、丁寧に2行にわたって正確に記述することが、得点を高くすることにつながると思われます。

第7問は、知識的なものを教育するやり方について、180字のマス目で文章として解答するものです。単に教育方法名を列挙する人が多かったのですが、講義法など、適した教育方法名を記述するだけでなく、そのやり方や留意点など、具体的な進め方についても、文章として記述することが重要なポイントになります。

両問とも、得点を高くするためには、問題を見るだけでなく、答案用紙も見て、どのような解答が求められているのかを考えてから解答すべきです。

7.販売計画と管理

第6問は、第5問とワンセットで問題の対象としました。ハンドブックをよく学習している人にとっては、季節指数の求め方の名称とその方法を問う問題ですから、比較的に解答しやすい問題であったと思います。

しかしながら、実際の問題の難易度は、少数の満点の受験者がいる一方、白紙、もしくは低得点の受験者の割合が非常に大きく、正答率の二極化が見受けられました。また、受験地の商工会議所によっても、優劣の格差が顕著でした。

季節指数に関する理解がおおまかなために、名称と方法が一致しない受験者など、中途半端な理解にとどまっている解答が気になりました。また、名称では、「連環比率法」を「連還比率法」と記入するなど、誤った字も多く見受けられました。

第7問における採点上の傾向としては、次の2点に要約できます。

①満点が非常に少なかったこと。
②白紙の解答が30%程度を占めていたこと。

まず、満点が少なかったことの原因としては、ストアロイヤルティという用語の意味を適切に学習していなかったことに尽きると思います。

最近では、ストアロイヤルティは、小売業界や専門誌などで頻繁に、さまざまな使われ方をしています。そのために、ストアイメージの形成要素と誤解したり、“何でも書けばよい”という気持ちになってしまったりしたのではないでしょうか。その理論、体系の学習を怠ってしまった結果と考えられます。次に、白紙の解答だった多くの受験者は、明らかに学習不足の結果と判断できます。

8.情報化

第6問は完全な応用問題で、第7問はハンドブックからの出題です。両問題を比べると、第7問の出来、不出来の差が大きかったように思われます。これは、ハンドブックをきちんと学習しているかどうかが、出来を大きく左右したためだと思われます。

第6問、第7問ともに、地域によって正答率の差が大きく、出来の良い地域と出来の悪い地域の差が顕著でした。また、全体的に白紙の答案用紙が多いことが気になりました。

第6問は、完全な応用問題であり、正解の許容幅をある程度大きくしたために、結果としては、第7問よりも出来が良いようでした。「トレーサビリティ」自体への関心が高いために、多くの受験者が仕組みの概要を理解していたと考えられます。誤答の中では、「食品トレーのリサイクルシステム」と勘違いしている解答が目立ちました。

第7問の「データウェアハウス」という用語自体は、理解している受験者が多かったようですが、「どのように理解されているか」に関する説明が抜けている解答が目立ちました。データウェアハウスを理解していれば、その利用方法は容易に解答できるはずであり、設問をきちんと理解していないことが原因だと思われます。



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