1級販売士 記述式問題講評(第37回)






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1級販売士 記述式問題講評(第37回)

第37回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第37回1級販売士検定における記述式の講評

1.小売業の類型

【第6問】
 循環型社会の形成に向けて、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)におけるメーカー、小売業者、消費者の各々の役割についての知識を問う設問です。

有用な資源の再利用を促進し、廃棄物を減らす目的をもつ家電リサイクル法の基本的な枠組みを押さえることが重要です。たとえば、消費者は使用者としてリサイクルに関する負担をする役割や、廃棄された家電を収集し、運搬する小売店の役割、リサイクルを行うメーカーの役割などがあげられますが、これとは関連性の薄い解答も見られ、点差が開きました。

この設問では、家電リサイクル法の策定が要請された背景や枠組みなどをうまくまとめて解答することが重要になります。

 【第7問】
平成18年に改正された中心市街地活性化法に関して、その改正後の内容についての知識を問う設問です。

まちづくりは長期的な視点に立つものであり、高齢化が進行し、人口が減少傾向にあるわが国では切実な課題になっています。近年、提唱されているコンパクトシティの理念のもとで、同法が大きく変更された内容、つまり、都市機能の中心市街地への集約や実効性のある活性化策の推進などの改正に関わる中心的なポイントについて要領よくまとめて解答することが求められます。

しかし、解答としては、TMOに関する記述が多くあげられており、その他にも改正前の中心市街地活性化法について記述をしている受験者が多く見受けられました。また、記述式にも関わらず、単語を列挙するのみの受験者も見受けられたことが残念でした。

2.マーチャンダイジング

マーチャンダイジング科目を学習するにあたっては、小売業経営における販売時点や仕入れ時点で活用する各種計算式の意図を十分に理解することと、それらを繰り返して演習することが不可欠です。特に、小売業が日々活用する計算式は、公式を変形して応用しなければならない場合が少なくありません。それゆえ、学習にあたっては公式だけの理解にとどまらず、公式の発展形態までに関心を払うことが重要です。

 【第6問】
ある店舗のデータにもとづき、売上総利益と商品回転率を求める計算を問う設問です。当然、計算式の意味と計算方法をよく理解していなければ正解には至りません。そのため、今回の試験においては、計算式の意味をしっかりと学習している受験者とそうでない受験者とに二極分化する傾向がみられました。

まず、売上総利益を算出するには、売上原価を算出しておかなければなりません。したがって、期首商品棚卸高に純仕入れ高を加えてから期末商品棚卸高を差し引くという計算式の構造をよく理解しておくことが必要です。この売上原価を算出できない受験者は少なくありませんでした。その結果、正しい商品回転率を算出できない受験者を増やしたといえます。

解答の中には、売上原価の算出不備や計算間違いなどが見受けられました。また、数値だけで、「円」や「回転」の単位を明記していない受験者も少なからず見うけられました。各種計算式の演習には、できるかぎり多くの時間をかけることが必要です。今回の採点で実感したのは、演習不足の受験者が多いという傾向です。

一方、商品回転率の計算は、年間売上原価を年間平均在庫で割って求めます。しかし、年間平均在庫は年間売上原価の算出方法と同様、原価を単位として計算しなければなりません。けれども、この単純なミスを犯す受験者は少なくありませんでした。これは、計算式の意図や展開の構造などを理解していないといえるでしょう。したがって、今後、計算問題の理解と演習のために、できるだけ多くの時間を割いてほしいと思います。

 【第7問】
月初適正在庫高の算定方式を選び、その「名称と求め方」を問う設問です。

大部分の受験者がポピュラーな基準在庫法と百分率変異法を選択し、解答していました。設問を「求め方≒計算式」と判断したのか、月初適正在庫高を求める計算式だけを記述している受験者が非常に多かったです。この設問の意図は、単純に計算式の記述を要求したわけではなく、“求め方”を問いていました。

また、月初適正在庫高を一般的な棚卸と誤解していた受験者も少なからず見受けられました。棚卸の評価基準を月初適正在庫高と誤って記述した受験者が見うけられたことは、理解度が低かったことを表しています。

以上、マーチャンダイジングにおける記述式問題では、計算問題やそれに関連した用語の意味を問うことがねらいでした。マーチャンダイジング科目における計算式の理解やそれらの演習は、店舗経営に欠かせない日常業務の領域であり、今後とも十分な時間を演習問題に割いてほしいことを申し添えておきます。

3.ストアオペレーション

ストアオペレーション科目を学習するにあたっては、ハンドブックに記載された原則や一般的なルールなどを、実際に店舗において確認する現場学習が不可欠です。本科目は、理論というよりも、店舗における共通的な運営実態を体系的にとりまとめている部分が多いからです。その意味で第7問は、まさに小売業経営の実態を理解するという強い気持ちで学習しなければ正答できない問題といえるでしょう。

 【第6問】
示された最少のデータにもとづき、人件費の総枠、店舗合計の1人時単価、人時生産性を求める計算問題です。

人件費の総枠と店舗合計の1人時単価については、多くの受験者が正解していました。計算式の演習などによる、適切な学習効果の表れだと思います。

一方で、正答率が最も悪かったのは、人時生産性を求める計算問題でした。ほとんどの受験者が誤った計算をしていたことが、正答率の低さという形で表れています。総じて、人時生産性の問題はまさにウイークポイントであり、今後の課題ともいえます。

まず、「人件費の総枠」は、対象店舗の粗利益額から求めていく必要があります。そこでの誤りの多くは、粗利益を“売上高”と取り違えていることです。人時生産性を求める場合、必ず「粗利益がベースになる」ことを理解していれば、次の労働分配率の計算を間違えることはありません。よって、人件費の総枠は粗利益額に労働分配率を掛けて求めることができるのです。

次に、対象店舗の合計の1人時単価を求めます。それには、パートタイマーの相乗積と社員の相乗積を足して算出します。しかし、この単純な計算ができなかったことから、「1人時単価」に対する理解度の低さを実感することができます。

そして、最も正答率の低かった「人時生産性」を求める計算は、最初に対象店舗の今期の総人時を算出するため、人件費(総枠)を1人時単価で割る計算から始めなければなりません。そうすると、人時生産性を求めるときの総人時が決まり、粗利益額を総人時で割る計算へとスムースに移れます。

この問題は、理解している受験者と理解不足の受験者とに二極分化する傾向にありました。ただし、人時生産性を求める計算は、今後とも大変重要なので、人件費の求め方、店舗合計の1人時単価、人時生産性の求め方などの主旨をよく理解し、繰り返して演習することが必要です。

 【第7問】
生鮮食料品のロスを削減するための基本的管理ステップ(3段階)の名称とそれぞれの段階の具体的対策を問う設問です。

生鮮食料品の特質を踏まえて記述しなければ、正解(25点)とはいえません。ところが、この特質を無視して一般的なロス削減方法を記述した受験者が多数見られました。

まず、基本的な記述事項では、3段階のステップアップを正しく記述できるかどうかがポイントとなります。第1段階は、発注時点におけるロス削減です。多くの受験者が仕入れ段階などと、広義の段階を記述していました。広義にみれば、仕入れも発注も同じ意味になりますが、店舗やPCにおける作業段階でみれば、意味は変わってきます。すなわち、狭義にみれば、仕入れ段階ではなく、発注という作業段階として解答すべきです。

第2段階は、加工時点におけるロス削減です。ここが、生鮮食料品の特性を表わす段階です。多くの受験者がこの段階を取り違えていたようです。すなわち、加工段階での具体策を明記できなければ、「この問題の主旨を理解していない」と判定されても仕方ありません。したがって、この正答率は圧倒的に低い結果になりました。

第3段階は、在庫時点におけるロス削減です。ここでも、在庫時点を販売時点や売場時点、さらには見切り時点などと多様に捉えて解答する受験者が多かったようです。しかし、正解はハンドブックにもとづき“在庫時点”です。

そして、それぞれの段階におけるロスを削減する具体策においても、実に多様な解答が見られました。しかし、評価基準のポイントは、段階に適合した“生鮮食料品のロスを抑える方策”のみ正解ということです。間違いの多くは、一般的なマネジメントのサイクル(仕入れ→販売→在庫)を記述する傾向にありました。これでは、生鮮食料品の特質を無視したロス削減方法であって、正解にはなりません。

今後とも、こうした記述式問題は多面的に出題されるでしょう。その記述ポイントは、段階ごとに適切な名称を振り分けて記述できること。そして、段階ごとに適切な具体策を記述できること。この2点を重視して、記述問題を解く練習をすることが肝要です。

4.マーケティング

 【第6問】
第6問は、RFM分析の各頭文字の名称と内容、そしてこの分析を用いるねらいを問う設問です。

カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)とは、顧客一人ひとりの情報の活用によって、顧客の利便性と満足度を高め友好関係を築きながら、長期間にわたって顧客との関係性を維持することです。従って、中・長期的、かつ、戦略的な概念であり、自店にとっての顧客の生涯価値(LTV:Life Time Value)を最大化することによって、自店に対するストア・ロイヤルティを高めてもらおうとする経営戦略と言えます。

CRMのねらいは、①将来優良顧客になりそうな予備軍を発見し獲得する、②顧客1人当たりの売上を向上させる、③顧客の離反を阻止する-といったところにあり、そのため、デモグラフィック分析、RFM分析、サイコグラフィック分析などを用いて明確なるターゲットの絞り込みを行います。

Rは、「Recency(リセンシー:最新購買日)」で、ある顧客が最後に商品を購入した日を示します。活用方法としては、より最近購入した顧客の方がそれより前に購入した顧客より優良顧客と考え、より積極的なアプローチを試みます。Fは、「Frequency(フリークエンシー:購買頻度)」で、ある顧客がどの程度頻繁に購入してくれたかを示し、より購買頻度の高い顧客ほど優良顧客と考えます。Mは、「Monetary(マネタリー:累計購買金額)」で、ある顧客の購買金額の合計を示し、この金額が大きいほど優良顧客と考えます。

また、RFM分析を用いることによって、デモグラフィック分析では判断できない自店にとっての優良顧客をより正確に見つけ出すことが可能になります。

内容面ではありませんが、「購買」の文字を「購売」とした誤字が目立ったことが残念です。

【第7問】
第7問は、外的アプローチのステップを示したうえで、その中のいくつかの手法を計算式で問う設問です。

店舗投資計画のスタートにあたる新規出店に伴う初期投資の採算性の検討方法には、外的アプローチと内的アプローチの2つがあります。外的アプローチは、立地条件から売上可能額を予測し、その売上予測から投資可能額を算出する手法です。したがって、活用するデータは、商業統計をはじめとした二次資料、あるいは実態調査など外部から収集した資料を基にして分析を進めていきます。

そのステップは、まず、①ハフモデルやライリーの法則などの商圏設定モデルを用いて商圏設定を行います。次のステップからが設問として出題されましたが、②の予測は、国勢調査や家計調査などを用い、一世帯当たりの平均年間消費額×商圏内世帯数で求めます。③は、吸収目標シェアの把握ですが、これは流入・流出状況を把握し、地元購買率を求め、これと競合店との関係から算出した自店推定シェアの積で求めます。ついで、②で求めた潜在購買力と③で求めた吸収目標シェアを掛けて④の目標売上高を予測します。そして、最後に投下資本の検討というステップに進んでいきます。商圏の大枠を把握し、そこから絞り込んでいくというステップを把握しておきましょう。

5.販売・経営管理

【第6問】
株価収益率、配当性向、配当利回りを問う設問です。

株価収益率、配当性向、配当利回りのいずれも、株価と利益の関係を分析する際の基本的指標であり、「販売・経営管理」科目の記述式問題としては、例年よりも正答率が高めとなりました。その一方、計算式を覚えていなければ解答できない問題であり、ゼロ点も多数ありました。計算問題は、計算方法を覚えていれば着実に解答できるので、そこで得点できないと全体の得点に大きく影響します。

計算式の記述については、なぐり書きのような解答が散見されましたが、丁寧に記入してもらいたいものです。また、ケアレスミスとして多かったのは、せっかく計算式で正答していても、計算結果が桁違いであったり、〇倍、〇%といった単位表示が抜けているものが目立ちました。落ち着いて計算、解答して欲しいと思います。

【第7問】
インタレスト・カバレッジ・レシオとキャッシュフロー版インタレスト・カバレッジ・レシオについて問う設問です。第6問に比べると正答率は低めになりました。

インタレスト・カバレッジ・レシオは、事業によって得た利益(営業利益と金融収益)が融資における支払利息等、金融費用の何倍であるかを測定するもので、金融機関などでは、融資先企業の格付をしたり、金利支払能力をみるうえでの代表的経営指標の一つとして使用します。

インタレスト・カバレッジ・レシオの意味(計算式)が解らないために、キャッシュフロー版インタレスト・カバレッジ・レシオと比較しながら答える(3)の問題は多くの方にとって少々難問だったようです。単にキャッシュフロー版インタレスト・カバレッジ・レシオの用語説明をしただけの解答や、キャッシフローベースの経営分析のメリットだけを解答したものが目立ちました。

厳密に金利支払能力をみるならば、損益計算書上の利益があるかどうかよりも、実際にキャッシュがあるかどうかのほうが肝心です。このキャッシュフロー版インタレスト・カバレッジ・レシオによって、本当の意味での金利支払能力を判定できます。



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