1級販売士 記述式問題講評(第38回)






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1級販売士 記述式問題講評(第38回)

第38回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第38回1級販売士検定における記述式の講評

1.小売業の類型

【第6問】
需要予測による自動補充発注の効果についての問題です。

近年、情報技術を活用して、製造業者と小売業者が協働することによって、小売業における在庫のあり方、店舗のオペレーションのあり方を改善する方法が採用されつつあります。

こうした情報化と協働化を通じた、小売業の業務革新の成果について理解を探るための問題です。今回の回答の傾向としては、サプライチェーン・マネジメントの一般的な特性を記述する解答や関連性の薄い回答があったり、ポイントと内容がずれているものも見られ、点差が開きました。ポイントとその内容を正確に理解した上での学習を望みます。

 【第7問】
チェーン・オペレーションの3つの標準化についての問題です。

大規模小売業が展開するチェーン・オペレーションに関して、一般的にあげられる3つの標準化についての基礎的な把握が求められます。こうした標準化を通じて、小売業の本部と店舗が機能的に分業し、全体的な効率を高めることができることを理解した上での記述が求められます。

今回の解答の傾向としては、フランチャイズ・チェーンの基本原則を記述したものや、誤字・脱字が目立った点が残念でした。

2.マーチャンダイジング

マーチャンダイジング科目の学習にあたっては、マーチャンダイジングサイクルにもとづくそれぞれの業務内容と位置づけをよく理解したうえで、それらに付随する業務活動の一つひとつを確実に理解していくことが大切です。特に、小売業の価格政策は、マーチャンダイジングの中でもきわめて重要です。ただ単に政策ごとの意味を暗記するのではなく、価格政策の全体像(体系)や構造面を整理することから学習すべきです。

総じて1級の試験は、細かな具体的戦術を問うのではなく、理論的、マクロ的に小売業経営を理解しているかを問うものです。したがって、共同配送システムのような応用問題に関しても、目先の具体的なメリットを記述するのではなく、広く社会・経済的見地から解答することが求められています。それゆえ、学習にあたってはハンドブックだけの理解にとどまらず、日ごろから流通経済分野までに関心を持つように心掛けてください。

 【第6問】
小売業の価格政策に関する正答率は、意外なほど低かったといえます。しっかりと理解すべき部分(重点箇所)とは位置づけていなかったのでしょう。何となく曖昧な理解のまま、試験に臨んでいるようにも思われました。特に、効果については、問題文で「小売業が“消費者に”与える効果」と指示しているにもかかわらず、消費者にとっての効果を明確に記述できていませんでした。

また、「商品カテゴリーを記述すること」と問題文で明示しているにもかかわらず、必需品、ブランド品などの商品カテゴリーではない分類用語が多く記述されていました。

これらによって、心理的価格の記述という比較的難易度の低い問題の割には、正答率が低い結果となりました。

 【第7問】
物流に関する応用問題であることが、正答率を大きく引き下げたことは否めません。ただし、応用問題といっても、物流の専門的問題ではなく、むしろ社会・経済的な問題として出題しており、その意図を理解していれば、とりわけ難しい問題ではないと思います。
正答率が非常に低かった主要点は、共同配送システム本来のメリットが正しく記述されていないことです。解答の大半は、効率的物流システムやJIT物流などと同様のメリットについて記述されており、共同配送システム固有のメリットが記述されていないことが、減点の対象となりました。

模範解答として一言述べるならば、共同配送システムの効果は、車両台数の削減に伴うドライバーの数はもちろんのこと、排気ガスの減少に伴う地域環境への配慮といった社会・経済環境に与えるインパクトが大きかったことにあります。その環境面に焦点を合わせて解答すべき問題なのです。同時に、混載便としての特徴をしっかりと記述することが求められているのです。

誤った解答の共通点は、共同配送システムの“効果”ではなく、その“意味”を記述していることです。また、物流コストの削減、リードタイムの短縮など、効率的物流システムのメリットを記述する受験者も多く見受けられましたが、減点の対象とせざるを得ませんでした。日々、消費者の立場から小売業の革新的活動状況を把握する習慣を身につけておくことが大切です。

3.ストアオペレーション

ストアオペレーション科目を学習するにあたっては、ハンドブックに記載された原則や一般的なルールなどを、日々、身近な店舗において観察する現場学習が欠かせません。なぜなら、本科目は理論というよりも、店舗における共通的な運営実態を体系的にとりまとめている部分が多いからです。その意味で第6問は、ローコストオペレーションの構造面を理解していることが前提です。その一環として、人時という課題が問われていることを理解しなければなりません。

また、OJTのステップは、多くの小売業が実践している内容や手順を平準化して取りまとめたものです。ここで問われているのは、全体フローと各段階での取組み手順をきちんと整理できているかということです。

 【第6問】
本問題に関しては、ローコストオペレーションを確立するための「必要人時の意味と考え方」を十分に理解していなかったといえます。

まず、固定人時と変動人時の意味をきちんと学習できていません。最も多かった解答は、固定人時を正社員のことと理解し、変動人時をパート・アルバイトのことと理解していることです。次に多かったのは、固定人時を日常業務のこと、変動人時を季節の販促などのことと理解していることです。このような誤った解答が大半を占めたのは、専門用語の意味を正しく学習していない証拠でもあります。

固定人時は、「売上に関係なく、売場の維持に必要な一定の人時」、変動人時は、「ある売上の分岐点を超え、売上の増加に伴い増える人時」、という解答を求めているのです。一方、必要人時の一般的計算手順については、「売場面積1坪当たり→坪当たり最低必要人時→1人当たりの売上基準→変動人時→固定人時と変動人時の大きい方を必要人時とする」、という簡単なフローを理解していない結果となりました。

余談ですが、必要人時の基本的な学習ができていないもう一つの証拠として、人時を“人事”と書く受験者が半数を超えたことがあります。人事は人時とはまったく異なる別の用語で、明らかに学習不足です。本問題の結果から、ローコストオペレーションの人時計算を体系的に学習する必要性があると思います。

 【第7問】
本問題は、まったくの学習不足といえるでしょう。ほぼ全滅といえるほど、惨憺たる結果に終わったことが残念です。実際、白紙またはOJTの効果的指導方法の全体像(ステップ)と勘違いしたような答案が数多くありました。

本問題は、指示文のとおり、“第1段階における手順”を問うものです。第1段階とは、「教える準備をする段階」を指しています。けれども大半の受験者は、効果的指導方法(全体)のステップを記述しています。つまり、問題文の指示をよく読まなかったことが正答率を大きく引き下げた主要原因といえるでしょう。

4.マーケティング

【第6問】
 第6問は、エコロジーとエコノミーを両立させる環境マーケティングの一手法に関する設問です。環境マーケティングでは、循環型社会に対応するという環境的アプローチとのバランスをはかること、社会と消費者ニーズ・利益を重視するだけでなく、地球環境の生態系と人間社会との均衡と共生をはかること、というコンセプトを基調にしています。

今回の設問ではその具体的手法のひとつである「3R」について問うています。「3R」とは、生産から消費にいたる過程における循環型システムにおいて、「リデュース(Reduce):減らす」、「リユース(Reuse):繰り返し使う」、「リサイクル(Recycle):再資源化」の3つの「R」を指します。今回の試験では、多くの受験生がこの3つの「R」を指摘することができていました。

それぞれを確認してみますと、リデュースは、環境負荷や廃棄物の発生を抑制するために無駄や非効率、あるいは、必要以上の消費や生産を抑制することを指しており、比較的正答率も高かったといえます。

しかし、リユースとリサイクルについては、両者を混同した解答が見られました。環境マーケティングにおけるリユースとは、再使用することを指し、一度使用された製品や、その製品の一部の部品をそのまま再利用するこという環境用語です。一方、リサイクルとは再資源化を指し、製品化されたものを回収して再資源化し、新たな製品の原材料として使用することをいいます。

また近年では、「3R」に「リフューズ(Refuse):ゴミになるもの自体の拒絶」を加えて「4R」と呼ばれることもあります。

【第7問】
第7問は、ネルソン(R.L.Nelson:1958)の「8つの立地選定の原則」についての設問です。8つの原則とは、ハンドブックに記載されているとおり、①現在の商圏の潜在力の妥当性、②商圏への接近可能性、③成長可能性、④中間阻止性、⑤累積的吸引力、⑥両立性、⑦競争回避、⑧立地の経済性、を指します。

ネルソンの原理は、「同種商品を扱う一定数の店舗は、それが相互に隣接し、また近接して位置する場合には、分散している場合よりも、より多くの取引きを行いうる」という「累積的吸引の理論」と「補完性の原理」が基になっています。

すなわち、「密接に接近して存在する2つの補完的店舗は、その相互に交流する総顧客数の程度に比例し、大規模店舗と小規模店舗との売上高の比に反比例し、各店舗での目的購買率の合計に比例して取引量が増加する」というものです。

また、この原理は、商業集積内の同種店舗間にのみ当てはまるのではなく、近接する商業集積間においても当てはまります。

今回の試験では、①現在の商圏の潜在力の妥当性、②商圏への接近可能性、および⑤累積的吸引力に関し、正当であっても、その説明が混同しているものが見受けられました。よく整理しておきましょう。

5.販売・経営管理

 【第6問】
 連結財務諸表は、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュフロー計算書から構成されますが、これらの計算書様式や作成要点については、体系的に学習して欲しい部分です。今回は連結株主資本等変動計算書に関する問題でしたが、他の財務諸表でしか表示されない項目を答えている解答が多々みられ、正答率はやや低調となりました。

また、「販売・経営管理」科目の財務諸表や財務分析に関する問題は、しっかり学習している人と学習不足の人とで、毎回点数差がつきやすい傾向がみられます。せっかく正答しているのに、誤字脱字が多いというのも変わらない傾向であり、固有名詞などは正確に覚えて欲しいと思います。

【第7問】
RFIDの技術については、ハンドブックでも紹介されているトレーサビリティでの利用や、公共交通機関でのICカード乗車券などで利用が増え、生活のうえでも身近になっているためか、高めの正答率となりました。

ただし、バーコードと比較したメリットを質問しているのに、単に「物流の効率化」、「在庫管理の効率化」、「レジの効率化」など、バーコードでも享受できるメリットを答えた人が多かったのが残念です。答案の要点として大切なのは、例えば「RFIDは・・・が優れているため、バーコードよりも一層物流の効率化が期待できる」といった「・・・」の部分です。

RFIDの仕組みやRFIDタグに関する解説だけに終わって、肝心なバーコードと比較したメリットついてまったく触れていない答案、メリットではなく普及の課題を諄々と述べている答案もありました。それらは、よく書けていても質問の意図とは異なるので正答とはなりません。

また、問題文では「2行程度の文章で記入しなさい」と指示しているにもかかわらず、ワンセンテンスのみや箇条書きで書かれている答案など、説明不十分で減点せざるを得ない答案もありました。

いずれにしても、問題文をじっくり読んで解答すれば防げるミスで、不正解や減点となるのはとても惜しいので、注意していただきたいと思います。



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