1級販売士 記述式問題講評(第41回)






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1級販売士 記述式問題講評(第41回)

第41回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第41回1級販売士検定における記述式の講評

1.小売業の類型

【第6問】
 本問は、フランチャイズ・システムのロイヤルティの徴収方式に関する問題です。フランチャイズ・システムはコンビニエンスストアを中心に小売業のみなら ず、ファーストフード、学習塾、レストランなど、さまざまなサービス業にも広がりを示しつつあります。こうした私たちの生活を支えるビジネスの仕組みであ るフランチャイズ・システムにおいては、粗利益配分方式、売上高比例方式や営業規模比例方式などのさまざまなロイヤルティの徴収方式が存在しています。本 問は、この徴収方式の算定基準についての基本的な理解を確認するものです。算定基準について聞いているにもかかわらず、設定論拠や特質を記述している答案 が多く見られました。また、算定基準は誰の何を対象にしたうえで設定されているかを記述する必要もありますが、説明不足の答案が見られました。
 ハンドブックの内容をそのまま覚えて書くだけでなく、出題の意図や文脈を理解したうえで解答する練習をしてください。

【第7問】
本問は、百貨店における仕入方式についての問題です。仕入方式には、買取仕入のほかに委託仕入と消化仕入があり、これらの仕入方式が十分に理解できてい るかどうかを確認するものです。答案の中には、消化仕入を買取仕入と同様の内容として記述しているものが多く見られました。また、相違点について十分に理 解しているものが少ないように思われました。
各仕入方式について、所有権が「どの時点」で「誰」から「誰」にわたるのか、所有権がわたることは「危険を負担すること」と表裏の関係にあることを図示しながら学習すると整理しやすいでしょう。

2.マーチャンダイジング

【第6問】
 本問のねらいは、割当予算および積上予算の意味を記述することにあります。ただし、単純、かつ、抽象的な意味を記述するのではなく、両者の意味の違いを 明記しなければなりません。そこに、評価ポイントをおいています。したがって、割当予算と積上予算との相違点は、“予算編成の手続き”の違いにあることを 理解していなければ満点をとれないのです。その重要な相違点は、「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」です。これらを両者に記述し、比較していない と、高得点は取れません。
 まず、割当予算の場合、予算編成の手続きに注目すると、「何にもとづいて」、「誰が」、予算を「どう設定するか」、について明記する必要があります。
 「何にもとづくか」の答えは、“利益計画”です。「誰が」とは、“トップマネジメント”ですが、経営管理者層やチェーン本部の管理者なども含まれます。そして、予算を「どう設定するか」は、“利益目標から各部門の予算を導き出して設定する”、です。
 一方、積上予算の場合、予算編成に注目すると、「誰が」予算原案をつくるか、その予算原案を「誰に」提出し、誰が「どのように」編成し、予算原案を「どう受け止める」のか、といった要素を一つひとつ記述しなければなりません。
 まず、予算原案をつくるのは、割当予算の場合のトップマネジメントではなく、“各部門レベル”です。提出先は、“経営管理者クラス”です。彼らが、予算原案を“尊重して総合的な調整を行い”最終的な予算を編成するのです。  これらの要素が明記されている必要があるにもかかわらず、これらの要素が明記されている答案は稀でした。
 全般的には、理解度の低さや学習力の不足が感じられます。たとえば、割当予算に関しては、「全体の売上や費用の予算を決めてから、各部門へ配分する形で 予算を編成すること。」といった単純な記述が多く見受けられました。また、積上予算に関しては、「各部門での売上や必要な費用の予算を決め、それを全体で まとめる形で予算を編成すること。」といった単純な記述が多く見受けられました。

【第7問】
計算問題は、毎回、正答率が低い結果となっています。明らかに演習不足の状況がうかがえます。(1)の「月間の期末棚卸高(売価基準)」と(2)の「A 店の期末棚卸高(原価基準)の両者を正答した受験者は、稀でした。全般的に、計算問題が苦手な受験者が多いと思われます。また指示文で「小数点以下第2位 を四捨五入する」とあるにもかかわらず、そのとおり解答していない答案もありました。
(1)「月間の期末棚卸高(売価基準)」については、計算式で「3.25」という答えを導き出しているにもかかわらず、解答欄に記述せずに空欄であったり、また、四捨五入して“3.3”としないで、「3.25」のままであったりした受験者が少なからず見受けられました。
(2)「期末棚卸高(原価基準)」についても(1)と同様に、四捨五入の不備が数多く見受けられました。
マーチャンダイジング科目では、計算問題は必須です。できるだけ数多く演習して計算実務に慣れ、苦手意識を克服されることが望まれます。

3.ストアオペレーション

【第6問】
 本問は、クロスマーチャンダイジングの意味を問う問題でしたが、正しく理解している受験者は、意外に少なかったです。表面的な学習にとどまってしまった ことが考えられます。特に、クロスマーチャンダイジングと関連陳列とは、まったく別個のものであるのにもかかわらず、両者を混同している答案が数多く見ら れました。
 また、“同時購買の確率を高めること”というクロスマーチャンダイジングの目的が記述されていない答案が非常に多く見受けられました。とりわけ、来店客 数の向上、比較購買、組合せの提案などのように曖昧な記述が多数見受けられました。明らかに学習不足といえるでしょう。このほか、“購”を「講」や 「構」、そして“購買”を「購売」と書いた多数の答案がありました。
 さらに、“テーマに密着した異なる商品をセットする”という「実施内容」に関しては、関連陳列と混同した答案が多数見受けられました。
 ちなみに、関連陳列とは、キャンプ、マリンスポーツ、バスタイムなどの大きなテーマにもとづき、それら複数の重点商品と複数の関連する異品種の異品目を組み合わせてトータルコーディネートし、快適な生活場面を提案する“ディスプレイ方法”です。
 これに対して、クロスマーチャンダイジングとは、定番商品の使用目的や用途などと直接、適合する異品種の単品同士をセットにして並列陳列し、同時購買を 促すことをねらいとした“プロモーション手段”です。したがって、提案するテーマは関連陳列よりも限定的、かつ、具体的で、「使用頻度、消耗頻度、購買頻 度」が同じような商品同士をセットにすること」が成功の決め手となります。
 たとえば、「朝食には特製卵かけごはんを」と題して、生卵コーナーにそれ専用の卵と卵かけご飯専用の醤油をセットしたり、「塩味さっぱりステーキ」と題して、精肉売場にそれ専用のステーキ用精肉とステーキの旨みを引きたてる岩塩を組み合わせたりします。

【第7問】
(1) スペースマネジメントの定義を適切に理解するには、次の2点を押さえる必要があります。
① スペース当たりの売上と利益の最大化というスペースマネジメントのねらい
② 商品の陳列位置や陳列量などを意図的にコントロールするという手法
しかし実際には、売上と利益のどちらか一方しかねらいを記述していない答案や、「売場のスペースを効率的に…」「中長期的な視点」「在庫量の適正化」「ROIの向上」など、実に曖昧な答案が多く見受けられました。明らかに学習力不足の傾向が読み取れます。

(2) ROIについては、次の2点を抑える必要があります。
① 投下した資本に対してどれだけの利益を獲得できたかをみるための経営指標というROIの意味
② 企業全体、事業単位、商品単位などで利用するという内容
①に関しては、総じて高い正答率でしたが、②まで記述して満点を取った受験者は稀でした。
また、「計算式のみの解答は不可」という指示にもかかわらず、「利益を投資で割る」などの記述が多く見受けられました。誤字も多くありました。
「スペースマネジメント」および「ROI」は、ストアオペレーション科目における重要な用語の一つです。これらを個々に覚えるのではなく、関連づけて理解していただきたいものです。

4.マーケティング

【第6問】
 本問は、マーケティング意思決定時に用いられる計量的技法(数学的方法)のうち、統計的技法についての問題です。統計的技法は、現象の定量的把握と要因 の把握を行うための技法であり、基本的統計解析手法と多変量解析手法に大別されます。今回は多変量解析手法の中から、「回帰分析」、「因子分析」、「クラ スター分析」の手法を問いました。
 解答に際しては、まず、記述モデル(記述的アプローチ)か予測モデル(因果的アプローチ)かということを理解しているかがポイントになります。すなわ ち、「多数のデータの背後にある現象の構造を明らかにし、共通性を見つけグループ化を行う記述モデル」なのか、あるいは、「現象を示す特定データが発生し た原因を明確化し、将来を予測する予測モデル」なのかを把握しているかということが重要になります。
 全体的を通して、体系的に把握していないためか、「因子分析」と「クラスター分析」の内容が錯綜してしまった答案も多々見受けられました。また、出題で は、各モデルの手法についての簡潔な説明を2行程度で求めていますので、あまり細部に及ぶ解説をすると本質的な部分がぼやけてしまいます。
 たとえば、「クラスター分析」の解答で「O分析」と「V分析」の内容説明に終始したり、「分離法」と「凝集法」の違いを述べている答案も見受けられまし たが、出題で求めている点は、「クラスター(個々の群)は、どのように(類似度にもとづいて)分類するか」ということを理解しているかです。多変量解析に は多数の種類がありますので、是非、体系的な把握を心がけてください。

【第7問】
本問は、クレプナー(Otto Kleppner)の提唱した商品広告における開拓的広告、競争的広告、維持的広告の概要についての問題で、各広告と商品ライフサイクルの各段階との関連性と目的を問うています。
今回は、解答者の多くが理解されているようでした。
開拓的広告は導入期に採用され、基本的需要を刺激する先導的・告知的広告で、競争的広告は成長期に採用され、選択的需要を喚起する説得的広告です。維持 的広告は、成熟期・衰退期に採用され、マーケットシェアや残存顧客を維持する想起的広告です。維持的広告に関し、成熟期のみ、あるいは衰退期のみに限定し た答案も見られましたが、維持的広告は、需要が頭打ちになった成熟期においても、それ以降、需要が減退しても採用される広告だということを理解しておいて ください。

5.販売・経営管理

【第6問】
 PER(株価収益利率)、ROE(自己資本当期純利益率)、配当性向のいずれもハンドブックを的確に学習していれば答えられる問題ですが、得点は伸び悩みました。
 (1)PERが高い場合の一般的評価については、PER=株価÷EPS(1株あたり利益)という計算式を覚えているだけでも、評価尺度としての意味はあ る程度類推可能ですが、白紙答案もありました。また、PERとROEについて両者真逆の答案や、PERではなくESPについて記述した答案なども散見され ました。
 (2)~(4)については、(1)以上に計算式さえ覚えていれば簡単に答えられる問題ですが、計算式を思い出す以前に、難しく考え過ぎた受験者が多かったようです。
 (4)配当性向が低い場合の一般的状態については、4つの小問題のうち最も正答率が高かったのですが、「配当の割合が低い・・・」といった文字どおりの 答えだけでは不十分です。「税引後当期利益に占める配当金の割合が低い・・・」、「税引後当期利益に占める内部留保の割合が高い・・・」などの記述が必要 です。
 このような経営分析指標については、第一に計算式を正確に覚え、併せて、その指標が何を意味(評価)するものか、指標値を高めるためにはどうすべきかなど、セットで学習して欲しいと思います。

【第7問】
(1)~(3)の小問題いずれも第6問と同様、ハンドブック記載内容からの出題であり、しっかり学習した受験者(満点)とそうでないと思われる受験者で大きな点差がつきました。
予見のなかには、計算に使用しない情報(数値)も含まれていますが、実際の財務諸表にもとづいてこれらの分析を行う場合、諸々の数値情報の中から必要な値だけを抽出して計算しなければならないことは言うまでもありません。そのための知識を問う問題です。
また、指示文で「答えには単位も記入」となっていますが、単位が漏れていたり、%表記すべきところが倍率表記などになっている答案が多々見られました。
計算式の解答欄に計算結果(答え)まで記入してあるにもかかわらず、答えの欄は無記入となっている答案も散見されました。
計算問題では、常々こうしたケアレスミスが目立ちます。必ず指示文の内容を守り、解答はしっかり解答欄に記入してください。



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