1級リテールマーケティング・販売士 記述式問題講評(第43回)






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1級リテールマーケティング・販売士 記述式問題講評(第43回)

第43回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第43回1級販売士検定における記述式の講評

1.小売業の類型

【第5問】
チェーンストア理論の有名なキーワードに“3S”があります。3Sとは、標準化(Standardization)、単純化(Simplification)、専門化(specialization)の3つを指し、今回の出題はハンドブックにも掲載されている標準化についてです。
平均点は悪くなかったのですが、高得点の回答はあまり多くありませんでした。3Sは個々が完全に分離された要件というわけではなく、相互に関連性があるのは確かですが、明らかに標準化よりも単純化や専門化の解説に近い答案や単純化や専門化に関する答案が散見されました。
また、(ア)目的と(イ)具体的に何を標準化するのか、を分けて解答するよう指示し、解答欄も分けていたのですが、混同記述している答案も散見されまし た。さらには、オペレーションの標準化と店舗の標準化を、ほぼ逆に解答している例もありました。オペレーションの標準化は、主に役割分担や作業フロー、作 業内容などに関するもので、諸作業を省力化・効率化して諸コスト削減に貢献します。一方、店舗の標準化はコスト削減のほかに、顧客からみた店舗イメージに統一感を持たせるといった効用もあり、代表的施策としては店舗面積・形状、フロア・ゾーニングや什器レイアウトなどがあります。
なお、今回は標準化についての出題でしたが、単純化や専門化についても(標準化との相違点を意識しながら)併せて学習しておくことで理解がより深まると思います。但し、顧客ニーズの多様化や高度化に伴って、3Sによるデメリットも発生し得る点にも留意しましょう。日本の小売業態のなかで最も標準化が進展し ているのはコンビニエンスストアチェーンであり、コンビニエンスストアの事例に当てはめて3Sを考えるのも効果的学習方法です。

【第6問】
高得点と低得点・ゼロ点の答案に二極化しました。第5問で高得点をとっているにもかかわらず第6問でつまずいてしまった方も散見されました。仕事を責任を持って遂行するプロセスである「コミットメント」⇒「レスポンシビリティ」⇒「アカウンタビリティ」については、ハンドブックにも掲載されていますが、ドラッガーの著書もみて改めて学習しておいて欲しいと感じました。
目立ったのは、例えばコミットメントについて、解答欄に単に“契約”または“約束”などと、英単語の和訳を記載しただけという答案です。どんなことについて契約するのかを書き記すことが必要です。
また、今回の出題では「・・・をプロセスとして関連づけて・・・」と指示していますが、関連性が説明できていない、または理解できていないと思える答案も散見されました。骨子を示すと、“約束したことを確実に実行し、その実行成果を報告する”というプロセスとなりますが、これに適切な言葉を補足肉付けすることによってそれぞれの模範的な解答となります。

2.マーチャンダイジング

【第5問】
本問は、管理会計手法の1つとして広く現場で使用されている物流ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)について尋ねたものです。物流の現場では、様々な作業の1つひとつを細かく分析し、それぞれの作業にどれだけコストがかかっているか、その実態を把握する手法として重宝されています。
本問は物流ABCのメリットについて尋ねたものですが、よく見られた間違いとしては、売上ABC分析について記したもの、A商品、B商品、C商品について詳しく記した回答が散見されました。
活動基準原価計算は、物流の世界だけでなく、今やサービス業全般で使用される基礎知識ともいうべき重要な手法です。目的、手順、メリットなどをしっかり理解し、これを実社会でも十分活用できるようになっていただければと思います。

【第6問】
本問は、商品カテゴリーごとの粗利益率、交差比率、積数、交差比率貢献度を求める問題です。商品カテゴリー別の販売計画を立案する際、それぞれのカテゴリーの利益率はどうか、商品回転率はどうか、交差比率(=粗利益率×商品回転率)はどうか、などを産出することは非常に重要です。こうしたデータをしっかり把握することで、小売業や卸売業は部門別管理が可能になり、販売計画を実施することが出来るようになります。
非常に多く見られたケアレスミスとしては、表中に%と記されているにも関わらず、1.0や0.6とする解答です。
本問は、全問正解している人がいる一方で、全問不正解の方も多くみられ勉強している人としていない人で、点数に大きな差が生じる結果となりました。またアとイの、粗利益率だけ正解の方も多くいました。
マーチャンダイジング科目で計算問題は必須です。しかし試験問題に正解するためだけでなく、これらの指標は、実際のビジネスでも非常に重要なものばかりです。何度も繰り返し演習し、解けるようになってください。

3.ストアオペレーション

【第5問】
本設問のポイントは、売上高の規定要因と品ぞろえ方法の関係を踏まえたうえで、専門店とスーパーマーケットの“売上向上戦略の違い”を正しく理解すること にあります。したがって、専門店とスーパーマーケットの品ぞろえの特徴を十分に理解したうえで、両者の売上高向上戦略を比較して解答しなければならない問題です。
まず、専門店とスーパーマーケットそれぞれの品ぞろえの特徴を述べ、“売上向上戦略”に関して説明している回答は少数でした。それぞれ店舗形態の品ぞろえの特徴については何かしら書けている人も多かったのですが、まれに品ぞろえに関する説明が不十分なまま、売上向上戦略の記述をしている回答もありました。

【第6問】
本設問の意図は、数量PI値について、単なる用語の意味だけではなく、商品管理への活用目的まで整理して正しく理解することにあります。したがって、用語の意味を理解したうえで式や目的を正確に解答しているかを基本としました。以下、解答の傾向を記しておきます。

①PI値の意味
「ある商品」「当該商品」などのように品目を特定することが重要ですが、実際には、対象が不明瞭な回答が目立ちました。単なる「商品」「1000人当たりの購買数」では意味が異なります。また、「支持度」「指標」がない回答などもありました。

②PI値の計算式
指示文で“数量PI値”としているにも関わらず、「金額」と書いた回答が見受けられました。「単位」「商品の特定」「来店(レジ)」の記述もれも多数ありました。また、各用語が正しく解答されていながら、四則演算記号(+・-・×・÷)と書き間違えているといったケアレスミスも散見されました。

③PI値の活用目的
目的が曖昧な解答が多く見られました。また、③“+安全在庫数量”を「最低在庫数量」や「最低陳列数量」などと記述した解答も多く見受けられました。また、“-発注時点在庫数”を「現在在庫数」と解答し、“-発注済未入荷残数”を「未納在庫数」と解答したものもありました。

①のPI値の意味については解答できていても、肝心なPI値の活用について記述している答案は、極めて少数でした。PI値について意味や式などの基本面の理解にとどまり、応用面については明らかに学習力不足であることが伺えます。

4.マーケティング

【第5問】
マーケティング戦略を策定する上で必要な分析についての考え方の一つがSWOT分析です。S(Strengths:強み)とW(Weaknesses:弱み)は企業内部の経営資源(ヒト・モノ・カネ・独自能力)についての強み・弱みを分析し、そこから可能性・制約をあきらかにします。 O(Opportunities:機会)とT(Threats:脅威)は企業外部の環境要因(市場・競争・流通構造・マクロ環境など)の分析で、環境要因から生じる機会(チャンス)と脅威をあきらかにします。これらの内部環境と外部環境の分析から、チャンスとリスクを見極めることがSWOT分析の意義です。
回答の問題点として、内外環境としての経営資源と環境の認識、その具体的内容についての理解、SWOT分析の目的についての理解不足が多く見られました。

【第6問】
本問は無解答、理解不足が非常に多く、結果として難問となったようです。新・小売引力(コンヴァース)の法則は、テキストにあるように、買回り品についての小売販売額を2都市間でどのように分け合うかを表した法則です。
数式だけを丸暗記して、法則の持つ意味や各変数の理解ができていないように思われました。また、ハフモデル、ライリーの法則、ライリー・コンバースの法則などと混同している解答も多く見られました。

5.販売・経営管理

【第5問】
組織形態に関しては、これまで何回か出題されていますのでよく勉強されている方も多く、全体的に白紙解答はそれほど多くありませんでした。
今回は、マトリックス組織の特徴をふまえた上での長所を問うものです。マトリックス組織の大きな特徴は、職能別の縦割組織と目的別の横割組織の異なった分 業基準から編成されるところです。そしてこの組織の主目的は、定例的業務の効率的遂行と、新規課題などの機動的解決に置かれています。
解答に当たっては、対外的な課題と内部的な課題の解決といった2つの側面から長所を考察します。
対外的な課題解決が可能になるメリットは、市場に対するきめ細やかな対応です。たとえば、各商品部と各地域のマトリックスを編成すれば、きめ細やかな商品政策を打ち出せるようになり市場に密着化できるといった点などです。
内部的な課題解決が可能になるメリットは、部門間の連携強化と部下の能力拡大などです。部門間の連携強化は、職能別組織とプロジェクトチームなどのマトリックスにより、静態的な対応(効率性向上)と動態的な対応(変化適応性)が可能になり緊密な関係性を形成することが可能になることや、部門間の横のつな がりが密になることなどです。また、縦横の連携を図ることにより、従業員の発想や視野の拡大につながるといった点もメリットのひとつです。
解答の中には、ツーボスシステムを挙げその説明をしているものやプロジェクトチームやタスクフォースの説明に終始しているものも見受けられました。また、二人の管理者が監査するのでガバナンス効果がある点を挙げている解答もありましたが、これは結果として現れることもあるということであって、主にその効果をねらってマトリックス組織を編成しているものではありません。

【第6問】
第6問はキャッシュフロー経営に関する出題です。ここは前問より白紙解答が目立ちました。出題の意図はフリーキャッシュフローの改善のための施策です。それを売上債権、仕入債務、棚卸資産の3つのポイントから回答してもらう問題です。
フリーキャッシュフローの改善とはキャッシュインフローを増加させ、キャッシュアウトフローを縮小させることです。したがって、売上債権においてはキャッシュインフローの増加につながるよう可能な限り現金取引の比重を高めたり、売掛金や受取手形の回収期間の短縮化に取組むことが考えられます。
仕入債務においてはキャッシュアウトフローが縮小するように、仕入先との交渉による前渡金の内容の見直し、買掛金、支払手形の決済期間の長期化などが考えられます。
棚卸資産においては、適正な在庫の維持です。過剰在庫や不良在庫はキャッシュのストック化を意味します。そこで、定期的な実地棚卸による不良在庫の見切り処分や、需要動向を分析しそれに見合った在庫数量の見直し、ジャストインタイム方式の検討などが考えられます。



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