リテールマーケティング(販売士)とは?
リテールマーケティング(販売士)は、日本商工会議所が主催する公的検定です。
小売業従事者が中心に受験をしていますが、最近では受験者が増えており、その層も拡大しています。製造業や卸売業、サービス業へと拡がり、また、2・3級では学生の受験者が非常に多くなっています。
これまでに約89万人(1級~3級の合計:平成26年3月末現在)が合格しており、販売士として各業界で活躍しています。
販売士検定試験の合格者には、「販売士」の称号が与えられ、「販売のプロ」として活躍することができます。
現在、流通業界では大きな環境変化(少子高齢化やライフスタイルの変化、IT化の進展)に直面しており、流通業界においては、多様化・高度化した顧客のニーズを的確に捉えて接客や商品提供ができる人材が必要となっています。この環境変化に対応できる人材こそ、「販売士」と言えるでしょう。
販売士(小売商)が誕生したのは昭和48年であり、歴史を持つ検定の一つです。現在では販売士と呼称していますが、当時は小売商と呼ばれていました。販売士(小売商)は流通業界では唯一の公的検定となっています。
小売商(販売士)は、昭和48年施行の中小小売商業振興法の条文規定から生まれたことに起因しています。当時は、大手小売チェーン店の台頭が見られ、中小小売商業の振興(いわゆる保護)を図るためのひとつに、従業者に対する資質向上が盛り込まれました。
小売商制度は、その具体的な施策として、監督官庁の当時の通産省・中小企業庁が音頭をとり生まれたもので、そこに業界も加わり、小売商検定としてスタートしています。ですから、日本商工会議所が実施していますし、小売商検定は公的資格検定として位置付けられているわけです。
その後、小売商という名称から、「小売」に限定することなく、小売業を取り巻く周辺の産業にも小売商検定の活用を促すべく、小売商から販売士へと名称を変更し、現在に至っています。昔の流通業の人は、今でも小売商と呼ぶ人もいますが、最近では小売商ではなく販売士と呼称するのが一般的でしょう。小売商と言われても何のことか分からない、少なくても小売商検定までイメージは至らないと思います。
なお、平成27年度より愛称が付与されました。以下、日本商工会議所からのインフォメーションです。
販売士検定試験の愛称について
「販売士検定試験」については、学習を通じて会得できる知識や実務能力をより的確に表わすことを主眼として、平成27年度試験分から、「リテールマーケティング(販売士)検定試験」という呼称・表記を使用いたします。 なお、本呼称は、当面、PR用の愛称として使用するものであり、正式名称は従来どおり「販売士検定試験」、また、試験合格者に授与する「販売士」の称号も現行のままといたします。
販売士検定は伝統を大切にしながら、環境の変化に対して適応し続けているのです。
販売士検定試験の体系
検定試験は、1級から3級までの3つに分かれています。
試験科目等の大幅な見直しにより、平成20年度に1~3級までの試験科目が統一されました。
試験科目に関しては、販売に必要な商品知識や販売技術、仕入や在庫管理、マーケティングなどです。
- 3級は売場の販売員のレベルで、販売員として最も重要な接客マナーや販売技術などの学習が中心です
- 2級は売場の管理者クラスのレベルで、店舗管理に不可欠な従業員の育成や指導、仕入管理などの学習を行います
- 1級は店長や経営者クラスのレベルで、トップマネジメント全般に関する知識を学習することになります
科目体系の見直しと合格基準
科目体系などの見直しが行われ、平成20年度に1級から3級までの科目体系が全て統一化されました。
【科目体系見直しのポイント】
① 1級から3級のレベル(人物像)について
- 1級は「経営管理能力がある者」
- 2級は「販売管理能力がある者」
- 3級は「販売技術能力がある者」、となっています。
② 1~3級の科目数と科目の名称について
- 小売業の類型
- マーチャンダイジング
- ストアオペレーション
- マーケティング
- 販売-経営管理、の5科目共通に集約
※1級は5科目の筆記試験と面接試験を実施、2・3級は5科目の筆記試験のみ
平成26年度より1級販売士の面接試験が廃止となり筆記試験のみとなりました
③ 1~3級の試験時間について
- 1級 250分 200分
- 2級 200分 150分
- 3級 120分 100分
平成27年度より試験時間が変更(短縮)されました
④ 1~3級の合格基準について
- 1級 平均70%以上で、1科目ごとの得点が50%以上
- 2級 平均70%以上で、1科目ごとの得点が50%以上
- 3級 平均70%以上で、1科目ごとの得点が50%以上
※④について、1~3級ともに足切りラインがあるということになります。ですから、5科目とも満遍なく学習する必要があり、不得意科目を作らないことが重要となります。
※1級のみ科目合格制度があります。
不合格の場合でも、70点以上得点した科目、および合格と判断された面接試験は科目合格となり、科目別合格証明書が発行されます。
科目合格別証明書は2年間有効なので、1級は長期的に科目を積み上げて最終合格を狙えます。
試験の実施時期
試験は1年度(1年間)に2回実施されます。
しかし、2回とも各級が実施される訳ではなく、3級と2級のみ2回実施され、1級は年に1回の実施です。(2級は年に1回の実施でしたが、平成27年度より年2回の実施に変更されました)
☆1級は年に1回しか受験のチャンスがありません!
受験申込を忘れないようにするのと同時に、一発合格を狙うのが良いと思います。昔の慣習(流通業の休日)からか、試験は日曜ではなく、水曜か土曜に行われます。特に1級は平日(水曜日)に実施するため、仕事や学校との調整も予め行っておく必要があります。
試験の申込は試験日の2~3ヶ月前に、忘れずに各地の商工会議所で手続きを行ってください。
受験資格と受験料
☆受験資格は?
受験資格に制限はありません。誰でも受験できます。(学歴・年齢・性別・国籍に制限なし)
☆何級から受験できるのか?
どの級からでも受験できます。3級から2級、1級へと受験するステップもあります。もちろん、いきなり2級を受験することも、思い切って1級を受験することも可能です。
☆受験料は?
- 1級:7,710円(税込)
- 2級:5,660円(税込)
- 3級:4,120円(税込)
手続きは、各地の商工会議所が窓口となっています。
☆合格者には認定証(カード)が交付されます。
管理人は1級に合格していますが、認定証とともに合格賞状も貰えます。認定証は、本人の写真がプリントされており、厚さもそれなりにあるので、豪華な仕様と言えます。(本人の顔写真が入るのは、1級のみのようです)
取得のメリットは?
商工会議所の資料を引用すると、
■役に立つ人として、
- デパート、スーパーなど、大規模小売店の販売員及び売場責任者や店長クラスの方
- 一般小売店の経営者及び従業員
- 製造業、サービス業、卸売業などの販売業務担当者
- これから流通業界で活躍したい人
■期待できる効果として、
- 接客に関する基礎知識が身につく
- 取扱商品に関する専門知識が身につく
- 売場や店舗を管理する能力が身につく
- 経済の動き全体からみた店舗経営が身につく
一般的には、学生であれば、就職に有利な資格の一つとなるでしょう。学習の成果を面接時にアピール可能です。大学・短大によっては販売士の取得を入学基準の優遇条件としているところもあります。(例えば、東京国際大学、東京経済大学など) 従って、高校生はより有利に大学進学を目指すことも販売士の取得により可能となるチャンスがあります。
社会人の方であっても転職に有利に働くほか、自己啓発にも有効です。販売士の学習は、ビジネス用語などで重要なものが多く出てきますので、ビジネス感覚も習得できます。特に1級に関しては、業種に関わらず経営に関するビジネス感覚を習得するのに最適です。
さらに、経営に関する資格試験は数が少ないので、販売士は貴重な知識を吸収することができます。大手の企業では、店長や幹部社員になるために、販売士合格を義務付けているところもあるようです。
1級に合格すればコンサルタントや講師になれる
1級取得者の中には、独立して流通・販売系のコンサルタントを行っている人もいます。1級取得者は「登録講師」の道がひらけており、各地で商工会議所などで販売士講座の講師を行うことも可能です。 (登録講師についての詳細はこちら)
また、中小企業診断士の受験科目と関連性が強いため、1級合格後、診断士を目指す方も多いようです。逆に、中小企業診断士を目指す過程で販売士1級に挑戦する診断士受験生も多いと言えます。
取得後の更新制度
販売士検定では、試験に合格したらそのままではなく、5年ごとの資格更新を要求しています。 これにより、常に新しい知識を有した販売士として、実務界で活躍することが可能となっています。
更新は、資格の有効期限(認定証に記載あり)の前年の10月頃に案内が送られてきます。合格後、住所や氏名が変わったら、合格した商工会議所へ連絡を入れておくのが無難でしょう。更新の手続きにはいくつかの種類があります。
☆2・3級の場合
- 資格更新講習会の受講をする
- 指定通信教育講座を受講する
- 上級資格を取得する、の3つです
☆1級の場合
- 資格更新講習会の受講をする
- 指定通信教育講座を受講する、の2つです。
(更新の手続きについての詳細は、送られてくる案内分を読み、確実に手続きを行ってください)
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