1級販売士 記述式問題講評(第30回)






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1級販売士 記述式問題講評(第30回)

第30回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第30回1級販売士検定における記述式の講評

1.商品計画と商品予算

基本的には、テキストに忠実に沿って学習を進めておけば解答できる問題です。したがって、全体として解答率も高く、出来は比較的良かったように思われます。

第6問については、商品系列別のマーチャンダイジング・サイクル全体としてとらえた誤答が目立ちました。特に、仕入や検収、在庫管理、販売、プロダクト・ライフサイクルに関する記述が多かったようです。

第7問については、商品計画と利益管理との関連を問う問題でしたが、解答パターンには、2つの特徴がありました。

第1に、モデル・ストック・プランやベーシック・ストック・オーダーリストに関して、商品計画策定に関する解説や商品ラインごとの計画を説明するにとどまる解答が多くみられました。

第2に、人事管理等も含めた店舗経営全体の視点から概説した解答や、社会経済環境の変化に対応した競争のあり方等を説明した解答など、企業利益の増大に関する記述に傾倒した解答が多くみられました。

2.仕入計画と在庫管理

第7問については、比較的良くできていたといえます。特に、現物を一つ一つチェックすることよって、品質劣化や万引きなどの消耗品の実額が把握できる点を指摘した解答が多かったようです。また、チェックに人手と手間を必要とするために、時間とコストがかさみ、店を一時的に閉める必要が生じる点を記述した解答が多くみられましたが、中間期のチェックや予測幅を超えた急激な販売額の変動があった場合の不適合に関する記述は、残念ながら少なかったようです。さらに、早めの集中仕入れによる季節割引の実現とそのための販売予測の重要性については、ダイレクトに説明した解答は少なかったようです。特に、予測を超えた販売変動があった場合には、品切れや遊休在庫の拡大が発生しやすく、それに気づくのも遅れる傾向にある点についての記述がほしかったと思いますが、そうした解答は少なかったようです。

第8問については、単位在庫統制の便法であることの記述は比較的多かったのですが、品質をチェックする科学的鑑定法や商用鑑定法、比較鑑定法と勘違いし、その内容を記述した解答がかなりみられました。現品棚卸の便法で、標準在庫とのズレ管理としての特性をダイレクトに記述した解答は、残念ながらかなり少なかったように思われます。過剰手持ちや不足手持ちの回避がされやすい点について説明した解答は比較的多かったのですが、検査リストの作成が商品管理や販売員の商品知識の増大に有効である点についての記述は残念ながら少なかったようです。さらに、予測を超える販売の変動があった場合には、ズレ幅が大きくなって在庫調整も遅れ、再発注のタイミングがずれ込む可能性が高まる点について触れた解答は少なかったようです。

3.経営とマーケティング

《A問題》
 第5問については、比較的よく出来ていました。それは、模範解答の通りではなくても、組成職能や執行職能に関して具体的に述べている解答についても高い得点をつけたことによります。しかし、どうしても見過ごすことが出来ないのは、「経営権は、経営者のみに属する権限と責任である」ことなのですが、この点についての記述がない答案は大幅に減点しました。

《B問題》
第5問については、経営力を経営戦略としてのみとらえ、現代において企業はいかなる戦略展開をすべきかを述べた解答が多かったようです。その内容自体は、優れたものも少なくありませんでしたが、ここでのポイントは、「経営力とは、管理と戦略の統合されたものである」ことを明らかにしたうえで、「今日は、戦略優位の時代である」ことを指摘することにあります。管理と戦略の統合までは記述していても、重要なポイントである戦略にウエイトをかけるべき点にまで言及している解答は少なかったようです。

第6問については、データベース・マーケティングという今日最も注目されている用語や手法の1つについてほとんど理解していない(知らない)解答が多かったのは意外でした。ともかく、データを活用してマーケティング活動をすることが、データベース・マーケティングであるとし、いくつかの例をあげている解答が目立ちました。また、データベース・マーケティングについて述べていても、基本や本質についての理解が不十分で、実態のみの説明に終わっている解答も少なくなかったようです。

第7問については、一般に、出来が良くないのが通例ですが、今回は、特に成績が悪かったと思います。基本的な問題ですが、抽象的であるために、かえって難しかったかも知れません。

問題の意図、あるいは出題範囲を完全に誤解して、見当はずれの解答をした受験者が目立ちました。例えば、信頼の原則を、法律問題ではなく、企業会計原則の観点から論じたケースなどです。

毎度のことながら、白紙答案が目立ちます。この問題が白紙答案の場合は、他の問題についても白紙の場合が多いようです。
得点分布が、標準的な山形とならずに、極めて少数の高得点者と多数の低得点者に2分されました。また、満点の受験者も少数ながら存在していましたので、「良くそこまで理解(勉強)している」という意味で、正直のところ驚異的です。
反面、誤解によるのではなく、分かっていないための解答、解答にならない解答(珍解答?)も毎回目立ちます。

4.経営計算

第6問については、「企業会計原則」が期間損益を適正に計算することを目的とすることを踏まえたうえで、いわゆる「もとで」と「もうけ」を明確に区別すべきことを説明するものでしたが、この点の正確な記述は必ずしも多くありませんでした。「資本取引」と「損益取引」の意味を十分に理解する必要があります。

第7問については、予算管理における「統制」と「調整」の意義が十分に区別されずに、混同した解答が目につきました。実務上の経験なり、体験をそのまま解答に結びつけた記述も散見され、予算管理が果たす役割を改めて学習する必要があるように思われます。

誤字や不正確な用語の使用が見受けられましたが、用語の「創作」はかえって減点の対象となるために、「財務管理と経営分析」の領域においては、用語とその定義を併せて確認する必要があります。また、前後の繋がりのない記述等、文章表現が必ずしも適切でない解答もありました。高得点の解答とそうでない解答に大きな差があるのは、この問題領域の特徴でもあるので、是非とも苦手意識を克服して学習に取り組んで頂きたいと思います。

5.市場調査と立地分析

第6問については、買物費用についての設問であり、移動に伴う交通費については、7割近くの正答率でした。しかし、交通費のような具体的な貨幣の支出を伴う費用以外の時間費用等については、単にその構成要素を解答するだけでは不十分であり、なぜそれらが買物費用となるかについても解答しなければなりません。また、商品代金を買物費用に含める解答がありましたが、買物費用の定義からすると誤りです。

第7問については、市場調査の方法についての設問であり、「訪問面接法を除いた代表的な調査方法」という設問の意図を理解しないで、調査内容に基づいた分類を解答するなどの不適切な解答がかなりみられました。1級ハンドブックに記載されていない調査方法であっても、現実に用いられており、またその内容が適切であるものについては正解としました。

6.組織と人事管理

第5問については、ネットワーク組織の最大の特徴である「情報の創造」が記述されているかどうかで採点は大きく分かれました。誤りの多かったのは、マトリックス組織との混同、IT(情報技術)上のネットワークのみを記述した解答が目立ちました。

第6問については、小集団活動の効用(効果)を4つ挙げるのですが、「4つの内容が重複している」「小集団活動特有の効用とはいえない人事制度一般にいえる効用を記述している」「解答欄は各々長い下線になっているのに、単語だけ列挙している」などが減点対象として目立ちました。

これら2つの問題で共通して注意すべきことは、問題をよく読み、答案用紙もよく見て、どのような解答が求められているか十分に理解したうえで、解答することです。また、誤字や脱字もかなり多かったので、解答した後で、もう一度よく見直して誤りがないかどうかを確認すべきです。

7.販売計画と管理

第6問については、結果を端的に言えば、「棚割の定義」という設問の意味を理解できなかったことと、その専門用語を適切に学習していなかったということです。これは、本試験の中でもかなり実用的問題です。それだけに、設問の主旨を十分に考えず、安易に解答するケースが多かったように思われます。つまり、受験者は学習上、イメージの把握にとどまり、棚割の本質を理解していなかったと判断できます。また、8行に及ぶ長文を読みこなしてからの解答という新しい設問形式と、ねらいなどの要件を設定したうえでの定義づけという設問形式に惑わされたことが低得点の原因と考えられます。定義としての棚割を理解できなかった主な理由は次のようなことです。

(1)思いつきや事例中心で、棚割の要件が記述されていない。従って、定義になっていない。
(2)棚割をゾーニングやレイアウトのことと勘違いして記述している。
(3)棚割の実施方法を記述している(採点にあたっては、少しポイントを付与しました)。

こうした暗記式思込学習方法に頼っていると、1級販売士としての能力は身に付かないばかりか、応用的な設問形式にも対応できなくなることを理解すべきです。

第7問については、次のような傾向にあり、全体としてあまり完成度の高い解答はありませんでした。
(1)文章として成立していない(日本語の文章になっていない)。
(2)誤字あるいはひらがなばかりの文章が多い。
(3)マス目を埋めるために問題文を繰り返し引用している。
(4)1級ハンドブックの内容を基に自分の言葉、あるいは表現を使った記述が求められますが、ハンドブックの内容をそのまま記述しているような解答が多かった。
とにかく、「1つのテーマの内容を200字程度でまとめるという能力に欠けているのでは」という感想を持ちました。

8.情報化

《A問題》
第6問については、静的情報と動的情報をそれぞれ2つの情報に分類し、その分類名称を記述しなければならない問題ですが、分類名称を記述していない解答が多かったようです。また、分類名称とそれに属する情報の組み合わせも、間違いが多かったので、基本的な学習が必要です。

第7問については、例年の特徴ですが、ヤマ掛けで試験に臨む受験者が多いように感じられます。このような問題は、ヤマが外れると、なかなか得点が伸びません。また、単語の解答を文章で説明し、解答する設問では、文章表現があまりにも簡潔すぎる傾向がみられました。

《B問題》
第6問については、正規化の部分は受験対策が不十分だったのか、正解者が非常に少なかったようです。また、第1正規化と第2正規化を混同しているなど、正確な理解が出来ていませんでした。

第7問については、記述量は多かったのですが、内容が問題の趣旨と異なるものが多く、得点が伸びていません。常識の範囲内で解答することも出来ますが、ポイントとなる用語を使用しての解答が重要です。



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