1級販売士 記述式問題講評(第34回)






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1級販売士 記述式問題講評(第34回)

第34回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第34回1級販売士検定における記述式の講評

1.商品計画と商品予算

第6問を解くには、カテゴリーマネジメントの計画策定と実施上の留意点について体系的な学習が必要です。それゆえに、販売士1級ハンドブックの記述にもとづきカテゴリーマネジメントのフローを体系的に理解しなければなりません。

カテゴリーマネジメントに関しては、学習する上での重要性が極めて高いにもかかわらず、採点結果から、理解度の低さを感じました。このことから、表面的な学習にとどまり、内容を的確に把握していなかったと判断できます。そのことが、販売士1級ハンドブックにもとづく十分な学習をした受験者とそうでない受験者の得点差に反映されたと言えます。つまり、しっかりと学習したと思われる満点の解答が少なからず見られた半面、ディスプレイ、SWOT分析などの問題と履き違えて解答する受験者が少なくありませんでした。

正答できなかった答案をみると、明らかにカテゴリーマネジメントの理解不足と指摘できます。カテゴリーマネジメントに関しては、参考書などの補助材を活用して完全にマスターすることが望まれます。第6問では、ウの解答率が高かったのですが、その多くは推測による解答と思われます。なぜなら、アとイが未解答、または誤った解答であったにもかかわらず、ウの部分だけが記入されているからです。カテゴリーマネジメントの全体像を理解していなくとも、推測で解答できる部分だけを記述したと判断できます。カテゴリーマネジメントは、時間をかけてしっかりとマスターしてください。

第7問は、(1)(2)ともに基本的な問題で高得点を期待しましたが、残念ながら正確な解答は少なく、満点答案はほんの僅かでした。初回値入と実現値入の違い、値引きと値下げの違いをもう一度調べ直して確認してもらいたいと思います。また、値入とは「販売価格と原価の差額」ですが、「・・・・価格のこと」という解答が多くみられました。「・・・・価格のこと」と解答したのでは「値入=価格」という説明になってしまいます。一方、値引きと値下げについては混同している人が多くみられ、両者を逆に解答した答案が少なくありませんでした。

2.仕入計画と在庫管理

全体的に設問に対する理解度が高い答案と学習到達度の低い答案の差が大きかったようです。したがって第6問、第7問ともに理解できている答案が多くある一方で、どちらも不十分な解答になっている答案も多く見受けられました。

第6問は、継続棚卸法と現品棚卸法の概要およびデメリットについて単純に項目のみしか示していないものと、両者の本質的差異を理解した答案で大きく得点の差がつきました。

第7問についても同様で、数量統制と金額統制の内容について、最寄品、買回品との関連やベーシック・ストック・オーダー・リスト、モデル・ストック・プランとの関連を用語として暗記して列記する答案が多く見られました。そのため、それぞれを反対に挙げている答案も少なくなく、結果としてユニットコントロールとダラーコントロールがもっている特徴を、論理的に理解して解答している答案とは大きく点差が開きました。また管理主体による利用適合性とその効果にまで言及するものは少なかったように思われます。内容をその根拠も含めて体系的に理解することで、学習した知識は初めて有機的なつながりを持ってくることに配慮して欲しいと思います。

3.経営とマーケティング

第5問は、経営者の基本的な職務遂行能力のひとつである組成職能を理解しているかを問う問題ですが、経営職能について正しく理解されていない答案が多く見受けらました。また、組成職能について訊ねていますが、執行職能について解答する受験生がいるなど、質問の趣旨に合致しない答案も多くありました。

第6問は、メーカー主導型マーケティングと顧客主導型マーケティングのあり方の違いを理解しているかを問う問題ですが、それぞれの特徴を把握した答案が少なく、適切なキーワードが見られないことから、設問の用語についての学習があまりされていないように見受けられました。

第7問は、「リース」に関する設問ですが、リースというものは、社会生活の中で広く使われている用語であるためか、多くの方が、何らかのメリットとデメリットに言及できていました。

しかしながら、「正解」となるには、正確な解答をいただくく必要があります。不正確な語句の使い方や、断定できないところを断定して、不正解となった事例が多くありました。例えば、メリットとして、「費用負担の必要ない」「費用は少なくて済む」などという解答が多く見受けられました。しかしながら、リースを導入するにもある程度の費用は必要となりますし、リースは、単に費用が少なくて済むのではなく、総額では、購入の場合より割高となる場合があります。また、デメリットとして、「リース料が高い」とだけ記載されている解答も、正確性を欠いた記載となります。

正確な記述をコンパクトに記載する、ということを心がけていただければと思います。

4.経営計算

第6問は、連結財務諸表を作成する場合、「連結の範囲」の決定においてどのような事実がある場合に子会社とみなされているかを問う問題でした。「企業グループ」や「子会社」といった用語は広く一般的に用いられていますが、その正確な定義が理解されていないまま連結財務諸表を用いた財務分析が行われている場合も少なくありません。支配力基準の考え方および実質的に子会社とみなされる場合の要件についてよく理解している優れた解答もありましたが、他方で、「小会社」や「可半数」等の基本的な用語の誤りも大変目立ちました。

第7問は、キャッシュ・フロー計算書の分析を行う視点から、棚卸資産の増加とフリー・キャッシュ・フローの関係および改善策について説明を求める問題でした。白紙の解答は少なく、受験者がキャッシュ・フロー計算書の意義や分析方法について理解を深めていることがうかがわれます。しかし、なかには棚卸資産と固定資産を混同しているものや、棚卸資産の増加を支出に対する収入の超過であると誤解しているものが散見されました。

本年度の問題は、財務諸表の利用者の立場から、財務分析を行う場合の基礎的な前提や具体的な分析方法の説明を求めています。単に比率分析等の計算方法を暗記するのではなく、財務諸表上の区分の考え方や個々の表示科目の意味内容、財務分析の結果に係る解釈についてしっかりと理解することが今後の学習のポイントになると思います。

5.市場調査と立地分析

第6問は、問題文がやや長いため一見すると難問にみえますが、よく読めば基礎的な問題で満点答案がかなりありました。また、解答(計算結果)については、計算式が正解であるにもかかわらず、桁数違いで不正解となる答案がやや目立ちました。

第6問を基礎的な問題としたので、第7問は販売士1級ハンドブックに直接掲載されていない部分を出題しました。ただし、第一種市街地再開発事業における権利変換方式と第二種市街地再開発事業における管理処分方式というのは、市街地再開発の基礎知識の範囲内です。採点結果としては、満点答案が多出する一方で、第一種事業と第二種事業の違い、または土地区画整理事業や中心市街地活性化について解答した人も目立ちました。また、両者を全く逆に解答していた人も少なからずいました。

6.組織と人事管理

第6問は、マトリックス組織の長所を4つ各々短い文章で記述する問題です。解答はハンドブックに記述されていますから、各々の主旨を的確に理解して解答欄のスペースにあわせて解答すればいいことになります。

誤答で目立ったものは、事業部制組織やネットワーク組織など他組織の長所と混同して書かれているものが多かったことです。ハンドブックに記されている4つの組織形態について各々の長短所をきちんと整理して的確に理解しておくことが大切です。

また脱字などが多く意味不明になっていたものも目立ちました。

第7問は、人事考課の主要目的を5つ短い文章で記述する問題です。

人事考課は多様な利用目的に使えるものですから、解答も多様にあり、比較的高い正答率となりました。人事考課は、それぞれの目的に合わせて設計を変えなければ意味がなく、また目的達成のためには人事考課の結果を受けて具体的な達成手段を導き出すことが不可欠です。その意味で人事考課は目的達成のための参考資料の位置にあることも理解しておく必要があります。

文章を要求されているのに単語で記したり、専門用語が誤っていたり、誤字や脱字も目立ちました。設問、解答欄をきちんと読み確認してから解答することと、記述はもっと丁寧に書くことを心がけてください。

7.販売計画と管理

第6問は、集客促進機能、購買促進機能、顧客維持機能の3視点から販売促進を体系的に類型化した問題なので、体系的に販売促進を学習しておかないと、容易には解けなかったと思います。しかし、受験者の多くは体系的な学習をしていなかった点が目につきました。特に、アとイのねらいについては、具体的すぎる販促名を苦し紛れに記述していたケースが非常に多く見られたことから、学習が不十分であったと思われます。

ア、イ、ウは、販売促進の体系をどのくらい理解しているかを問う問題であり、具体的な販売促進の名称を問うものではありません。きちんと目的別の販促体系を学習すべき問題です。集客促進機能では、主として新規顧客の開拓をねらいとしており、不特定多数の消費者に向かってチラシ広告などの手段で小売店に引き寄せるプル戦略が必要とされます。これに対し、購買促進機能では主として来店客の購買単価を引き上げるためのプッシュ戦略が必要とされますが、意外と理解されておらず、正解した受験者は極めて少数でした。

ISMは、インストアプロモーションとスペースマネジメントから成ることを理解していれば、エは自ずと解けるはずです。しかし、正解はほとんど見られず、棚割りやフェイシング、さらには陳列の種類などを具体的に解答するケースが多く見られました。

そうした中でも、比較的正答率が高かったのは、オです。顧客維持機能ということからの関連性で答えやすかったと思います。全体的に、販売促進を体系的に学習し、十分な理解のもとに臨んだ受験者は少数でした。

第7問は、購買心理過程の8段階のプロセスを問うものでしたが、これを完全にマスターしている受験者は少数でした。わかっているつもりでも、実際にそのプロセスを解答するとなると、難しかったと思われます。

原因としては、購買の8段階と販売員の行動を対比して学習していないことが挙げられます。アとイ、あるいはイとウを逆に答えるケースが少なくありませんでした。したがって、(2)では、誤った説明を記述することとなり、正解率が極めて低かったといえます。

8.情報化

第6問は、EDI(電子データ交換システム)の導入のメリットについて、①標準化と②業務面の効率化・省力化の観点から記述する問題であり、①は全体的に出来が良くなく、②は大体解答されていました。①については、ほとんどがEDIの本質を理解しておらず標準化の内容の記述が中心にされていました。また、②で聞いているEDIがもたらす業務面での効率化というメリットと混同している答案も多々みられました。

第7問は、バーコードと比較したRFIDタグのメリットについて問うもので、技術的メリットとその応用面が記載されている解答を期待しましたが、両方、共に解答している答案は少なく、技術側面の記述に片寄りがちな傾向がみられました。



1級販売士の記述式過去問講評(日本商工会議所発表)

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