1級販売士 記述式問題講評(第40回)






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1級販売士 記述式問題講評(第40回)

第40回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第40回1級販売士検定における記述式の講評

1.小売業の類型

【第6問】
 本問題は、CVSシステムが創出する効用について取り上げた問題です。CVSシステムは私たち消費者に商品、時間、場所、品ぞろえ、消費の即時性の効用をシステムとして創出します。本問題では、上記のうち時間の効用と消費即時性の効用について取り上げました。
 まず、この2つの効用は消費者にとってどのような意味内容であるのかを記述したうえで、CVSの単独の店舗ではなく、むしろCVSシステム全体の仕組みとして効率性を維持しながら消費者に対して効用をどのように創出していくのかという記述が望ましいといえます。
 解答としては、効用の意味内容を正確に理解している文章は少ないように思われます。消費者に対して発揮される効用を、店舗の効率性の立場から論じる文章も目立ちました。加えて、CVSシステム全体というよりは単独店舗としての記述が目立ちました。
 CVSはアメリカから我が国に導入された小売業態であるが、我が国の制度や文化のもとで小型化され、洗練され、システムとして大きく発展した形態です。 こういった意味でコンビニエンス・コンセプトを実現するための戦略・システム・オペレーションを理解することが必要であるといえるでしょう。

【第7問】
本問題は、サプライチェーンマネジメントとディマンドチェーンマネジメントについて取り上げた問題です。製造業主導で流通経路全体の効率性を図っていく サプライチェーンマネジメントに対して、ディマンドチェーンマネジメントは市場に有効に対応するため、小売業主導で流通経路全体が情報共有し、適応するも のです。
まず意義は、物事が他との関連からの重要性や価値を意味します。そういった意味では、サプライチェーンマネジメントとディマンドチェーンマネジメントの 主導者、その範囲、目的が述べられていることが望ましいといえます。また交換される情報の内容については、交換される当事者同士でどのような内容の情報が 交換されるのかという視点での記述が望ましいといえます。回答としては主導者が書かれておらず、また範囲や目的について書かれていないケースが目立ちまし た。
サプライチェーンマネジメントにせよディマンドチェーンマネジメントにせよ、流通経路全体として市場の問題に効率的、効果的に対処しなければならないということを経営者の視点から理解したうえで学習に励むことが望まれます。

2.マーチャンダイジング

【第6問】
 本問題では、「発注費用と在庫費用の“概要”を、“両者の違い”がわかるように“3行程度”の“文章にまとめて”記述」することと、指示文で明記してい ます。この指示文の意味は、問題を解くうえで極めて重要です。けれども、大半の受験者は、両者の具体的内容や特徴などをまとめた文章で解答していなかった といえます。全般的な感想として指摘しておきたいのは、専門科目であるにもかかわらず、箇条書きや単語の羅列で解答したり、誤字脱字も目立ったりして、基 本的なことができていない点です。
 記述式問題は、指示文をよく読んで問題の意図を考えなければなりません。けれども、大半の解答からは、用語の概要を記述していない、両用語の違いがわかるように記述していない、3行程度の文章にまとめられていない、という点が見受けられました。
 概要とは、発注費用および在庫費用の「意味、特徴、具体的な内容(たとえば)」ということで、原則として次の点に留意して明記しなければなりません。
① 発注費用および在庫費用の具体的内容
 たとえば、発注に関わる人件費、通信・交通費など
② 特徴
発注費用・・・1回当たりの発注数量を増やすほど、仕入れる商品1個にかかってくる発注費用は減少するなど
在庫費用・・・1回当たりの発注数量を増やすほど、仕入れる商品1個にかかってくる在庫費用は大きくなるなど

1級の記述試験であり、用語は漢字で記述するのは当然のことであり、さらに適切な文章にまとめて記述することが要求されています。箇条書きで解答するの は、減点の対象となります。文章化するためには、用語の意味を正しく理解することが必要です。今後とも、「文章化する」ということを念頭において、学習さ れることを望みます。

【第7問】
リベートとアローワンスの違いについて記述する問題です。総じて、リベートよりもアローワンスの方の意味を理解していない受験者が多いようでした。しか も、用語の意味を適切に文章化できる受験者が実に少なかったことから、明らかに学習不足といえます。これは、用語の意味を正しく理解したうえで、自力でま とめる訓練が不十分であることの表れでしょう。
また、報奨金や奨励金などの文字をカタカナで書き、漢字を書けない受験者が目立ったことに驚きを隠せません。今回、肝心な用語で多く見受けられた誤字脱字とともに、漢字で記述していない場合は減点の対象としました。

  リベートを解説するうえでは、次の点に留意しなければ満点を取ることはできません。
①期間・・・リベートは、原則として半期や通年といった一定期間の業績を対象とします。そして、その期間におけるメーカーの特定商品の取引高を基準として販売先企業へ個別に支払われます。
②誰が誰に・・・原則としてメーカーから卸売業や小売業に支払われます。これが明記されていない、または曖昧な記述が大半を占めていました。
③性格・・・たくさん販売した結果による“利益の割戻金的な性格”を持っています。
④ねらい・・・メーカーが流通業をコントロールするための政策であり、利益を補填することで、販売割当の達成や新商品の取扱い、そして末端小売価格を維持するような活動を統制することにあります。  一方、アローワンスとは、メーカーから小売業へ提供する販売奨励金的な性格のフィー(料金)であり、実際のプロモーション活動の対価としてメーカーから小売業へ支払われる活動費のことです。大部分の受験者が誤解しているのは、この点です。
 すなわち、当該メーカーの商品を販売促進するとき、小売業が店内の売場に舞台を設置したり、ポスター広告類を作成したりするなどの活動実費を「メーカー が小売業に支援するフィー」がアローワンスです。何らかのパフォーマンス(活動)がなければ支払われるものではないのです。
 第7問の解答では、リベートおよびアローワンスともに正しい意味を理解し、それを適切に比較して記述しなければなりません。ハンドブックには、リベート とアローワンスの単純な比較表も掲載されているため、今回はその表に記載された項目のみを解答として記述していた受験者が少なくありませんでした。しか し、それらの比較事項だけではリベートおよびアローワンスの正しい意味を解答したことにはなりません。
また、「リベートは事後に支払われるもの、アローワンスは事前に支払われるもの」という解答も大半を占めていました。これらは、実に短絡的な解答といえます。“何の”事後か、“何の”事前なのかが明記されていないため、文章として体をなさないのです。
 今後は、専門用語の意味を正しく理解し、適切な文章が書けるように学習されることを期待します。

3.ストアオペレーション

【第6問】
 日用雑貨と生鮮食品の特性に応じた発注に関する理解度を記述する問題です。以下、各指示項目の解答傾向を解説しておきます。
 ①商品特性(商品劣化の状況)に関しては、主語がなく「遅い」「早い」などの解答が多く見受けられました。
 ②発注サイクル(頻度)に関しても、主語がない解答や、「少ない」「高頻度」「月1回~年1回」などの曖昧な解答が多く見られました。
 ③発注のタイプに関しては、「棚札方式」「オーダーブック方式」と誤解答する割合が非常に高かったです。ここでは、「定量」「定期」「変動」などの解答も多く見受けられました。「棚札」を「棚礼」と書いた答案も多く見られました。
 ④発注量の決定方法に関しては、明快な解答が少なかったようです。
 ⑤販売方法に関しては、ハンドブックに記述が少ないためか、もっとも正解答が少ない問題となりました。
 全般的に日用雑貨では、「定番ゴンドラに陳列する」「定価で販売する」など日用雑貨の商品特性についての理解が不足している解答が目立ちました。
 一方、生鮮食品では、「冷蔵ケースに並べる」など、温度帯別商品管理を理解していない解答も多く見受けられました。生鮮食品は、その商品特性上、「即日完売」「売り切る」と明記する必要があります。
 今回の問題は、所定欄に適切な用語または簡潔な文章で記入できているかについても見ています。

【第7問】
小売店舗における人時計画の計算問題です。
(1)収支計画にもとづく人件費の総枠を求める計算については、比較的高い正答率でした。しかし、計算ミスによって減点される解答が多く見受けられまし た。計算式欄に公式や単位などを記述しない受験者は、総じてミスも多い傾向にあります。また、桁を間違えて解答欄に転記するミスも目立ちました。
(2)店舗合計の1人時単価を求める計算でも、(1)と同様に高い正当率でした。
(3)人時生産性を求める計算は、半数以上が不正解でした。総人時と人時生産性の違いが理解できていないようです。また、今回も、「人時」を「人事」と書いてある基本的用語を理解していない解答も見られました。
その他、計算式欄に筆算している答案が見受けられましたが、ここは公式やプロセスの式を記入する“解答欄”ですから、欄外で計算を行うか電卓を使用すべきです。 これらの人時生産性関連の計算問題は、公式をきちんと理解すれば点数を取りやすい箇所ですから、演習を繰り返して確実に得点することが望まれます。

4.マーケティング

【第6問】
 マーケティングリサーチのひとつであるグループインタビューに関する設問です。1級で把握しておきたいグループインタビューの内容は、その特性と範疇、その実施方法、そしてそこで得られたデータの記録・分析です。
 今回の設問ではグループインタビューで利用される質的調査の範疇について問うています。質的調査とは、量的調査とは異なり少数の事例(ケース)について さまざまな側面を全体的および統合的に把握し、調査者のすぐれた洞察力をもって一般化して解釈する調査方法です。一般的には面接法や投影技法などがその範 疇に入りますが、面接法と言っても形式的面接法と自由面接法といった分類や、構造化面接法(質問項目を決めておく)と非構造化面接法(質問項目は未決定) と半構造化面接法(仮説を設定し会話の流れに応じる)など多種の分類が可能です。
 また、投影技法も同様で、文章完成法、略画完成法、絵画解釈法、ロールシャッハテストなど種々の技法が存在しています。そこで本設問ではD.N.ベルン ガーの分類に基づいて出題しました。ベルンガーは、質的調査を集中的と投影的に分類し、前者をデプスインタビュー(深層面接法)、グループインタビュー (集団面接法)、オープンエンド質問とし、後者をTAT(主題統覚テスト)、ロールプレイング、言語連想法に分類しました。技法名とその内容が異なってい る解答も目立ちましたので詳細はテキストでご確認ください。

【第7問】
カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)における顧客維持の重要性についてコスト面から述べなさいという設問です。顧客維持の重要性は理 解していても、コスト面に限定した設問だったのでやや戸惑った受験生もいたかもしれません。CRMは、企業にとっての顧客の生涯価値(LTV:Life Time Value)を最大化するという経営戦略で、顧客の利便性と満足度を高めることが重要です。しかしここではその点にこだわり過ぎると出題意図と離れてしま います。あくまで、収益を圧迫するコストに注目してください。たとえば、顧客維持と新規顧客開拓にかかるコストの差、顧客を維持していくためのコストと離 反した顧客を取り戻すためのコストの差、既存顧客と新規顧客にかかる販売コストの差などが考えられます。
両問とも、完璧な解答がみられるものの、部分的にしか述べられていない解答や空欄も目立ちました。内容をしっかり理解できるよう体系的に把握するように心がけてください。

5.販売・経営管理

【第6問】
 総体的に白紙答案は少なく、比較的高得点者が多かったのですが、満点答案はあまりありませんでした。
 マトリックス組織の長所と短所を問う問題ですが、職能部門別組織や事業部制組織との比較で解答しなければならないので、この3つの組織形態すべての特徴を理解していなければ的確な答えになりません。
 また、解答用紙にはそれぞれ2行ずつ罫線を引いておいたので解答欄の大きさを見て、または指示文に何行程度と記載されている場合はその指示に従って、しっかりとした文章で解答して欲しいと思います。
 ただし、例えば「職能部門別組織や事業部制組織と比較したマトリックス組織の長所は、・・・・・」といった書き出しで文字数を稼ぐのはよろしくありません。
 一方、職能部門別組織と事業部制組織の長所と短所まですべて記述し、解答欄が足らなくなる答案も見られましたが、そこまでは求めていません。
 企業の組織には、この他にも様々な形態がありますが、必ずメリットとデメリットを併せ持っています。今後の学習においても、その点に注意するとともに、どんな状況の場合にメリット/デメリットになるのか、一歩踏み込んだ理解促進に努めて欲しいと思います。

【第7問】
①プロジェクト法、②イン・バスケット法、③マネジメントゲームのいずれもハンドブックに記載されているので、しっかり学習されていると思いましたが、 得点は総体的に低調で、白紙答案も多数ありました。ブレーンストーミングやKJ法について解説した答案も多く見られました。
恐らく多くの受験者は、これらの能力開発手法の名称(用語)については知っているが、その内容までしっかり理解していなかったのだと思います。
「販売・経営管理」科目に限ったことではありませんが、1級の記述式問題は単に用語の暗記力を問うものではなく、内容理解力を問うものです。
今後の学習方法として、ハンドブックから重要な用語を網羅的にピックアップし、それぞれ数行で解説できる能力を養う必要があります。そのためには、例え ば自分で小売経営用語辞典をつくるような感覚で、サブノートを作成するのも効果的です。また、その際にも暗記でなく理解することが大切で、ハンドブックの 記載内容にとどまらず、自分で調べて補足することが理解促進につながります。



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