1級販売士 記述式問題講評(第31回)






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1級販売士 記述式問題講評(第31回)

第31回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第31回1級販売士検定における記述式の講評

1.商品計画と商品予算

第6問は、様々な解答がみられました。解答として求めたのは、ハンドブックの「商品計画と商品予算」科目で論じられている流通業の業態でした。しかし、採点してみると、商学・流通経済論でいわれる一般的な流通機能、すなわち、物流・商流・情報流などに関する解答が比較的多かったようです。また、「需給バランスの維持・安定というマクロ経済的機能を有し」と問題文にあるにもかかわらず、その内容を言い換えただけの解答も多くみられました。

第7問は、ハンドブックの記載内容のみが出題対象となったことから、改訂に伴い新たに追加された「カテゴリーマネジメント」が出題されると予想していたのか、この問題も比較的解答率が高かったようです。ハンドブックに記載している「実施上の留意点」について書いたものが多かったのですが、商品計画の中でのカテゴリーマネジメントの流れ・位置づけを正確に把握しておく必要があります。また、「マネジメント」という言葉から連想する内容の経営管理・組織管理全般に関する記述もみられましたので、用語についての正しい理解が求められます。

2.仕入計画と在庫管理

第6問は、共同仕入と集中仕入がワンセットで問題の対象としていますので、ボランタリーチェーンや加盟店の共同仕入と大規模チェーン店や百貨店の中央一括仕入について論じることが必要です。期間的集中仕入や仕入先の絞込みによる集中仕入先の確保についての解答がありましたが、この問題の解答としては、残念ながら少しずれているといわざるを得ません。とはいえ、共同仕入と集中仕入の両方において、仕入期間を限定したり、仕入先を絞り込んで集中的に仕入れる場合もありますので、集中仕入については、センター仕入以外についても、その内容に応じて配点しました。

第7問は、恒常品は買回品であっても、常に売れる場合はその対象になります。しかし、残念ながら、恒常品=最寄品といった考え方に基づいた解答が多かったことも事実です。恒常品の仕入と販売においては、商品の安定的確保をできるだけ低コストで実現することが重要であるため、ベーシック・ストック・オーダーリストと経済的発注量への適合が有効となる点が、解答の中に明記してあるかどうかを採点のポイントにしました。さらに、コスト効率の面から、再発注期間や安全在庫への対応において、恒常商品は商品の販売数量の動きが安定している分、在庫投資を他の商品よりも大幅に切り詰めやすいのですが、その反面、品切れがもたらす悪影響が相対的に強く出る点を的確に論じている解答を高く評価しました。

3.経営とマーケティング

第5問の解答のポイントは、場所的隔たりを排除するためには輸送機能、時間的隔たりを排除するためには保管機能という2つの物流機能を必要とするというところにあります。しかし、場所的隔たり、時間的隔たりについて長々と説明し、これを解決するのが物流機能であるという解答がかなりありました。物流機能の内容を2つの隔たりと関わらせながら答えることを求めているのであり、物流機能によって解決するというのでは当たり前過ぎて解答にはなりません。また、近年クローズアップされている様々な物流活動やシステム、手法について解説している解答も少なくありませんでしたが、その内容自体は間違いではないとしても、問題の解答にはなっていません。

第6問は、ハンドブックを勉強している人にとっては、ある程度予想できた問題であったと思われます。ポイントは、「顧客が求めているのは商品そのものよりも、それを消費・利用することによって得られるベネフィット(恩恵)である」ということになります。多くの受験者がこの点について触れており、正解者もかなりありましたが、問題が容易なので採点は厳しくしました。

第7問は、やや難しかったと思われます。しかし、少数ながら満点の受験者もいることから、きちんと勉強している方にとっては解答できない問題ではなかったと考えられます。もっとも、このような問題で満点を取る受験者は、(法律の)他の分野でも相当程度の理解に達しているものと想像され、法律の専門家ではない社会人として実務についている人達であるとすれば、立派なものです。

問題の難易との関係では、少数の満点の受験者がいる一方、低得点の受験者の割合が非常に大きく、得点分布が標準的な凸形とならなかったことが気になります。

いつものことながら、白紙答案が多いことは驚きです。しかも、他の問題についても解答欄が白紙の場合が多いので、一体何のために受験したのかと疑問に感じます。

(法律の問題としてではなく、経営管理の問題として捉えている等)問題の主旨を誤解し、または全く理解していない受験者が多数いました。時折、どうしてそのような解答になるのか理解しかねる珍答もありました。

4.経営計算

財務諸表を利用する、あるいは分析する場合、財務諸表に表示される科目の意味を十分に理解しておく必要があります。

第6問は、引当金が何故計上されるのか、そしてどのような場合に設定されるのかということを、企業会計原則に従って説明する問題ですが、特に引当金が定義できていない解答が目立ちました。
第7問は、連結財務諸表を用いた代表的な分析指標である連単倍率について出題しました。連単倍率の説明の中に、「親会社」ではなく「本店」であるとか、「子会社」ではなく「小会社」とする解答が非常に目立ちました。全く意味が変わってしまうので、このような誤字はケアレスミスでは済まされません。また、連単倍率を単に「親子の比較」の意味で理解している答案が目立ちましたが、そうではないので、改めて見直してほしいところです。

会計・財務分析の領域についても十分に勉強されたことがうかがわれる、非常によくまとめられた解答が少数ながらあったことも付言しておきます。

5.市場調査と立地分析

第6問は、街づくりについて、具体的にどれだけ理解しているかということを問うものであり、ハンドブックを幅広く勉強しているかどうかによって解答に差が出ました。通常の都市計画法に基づく用途指定や地方自治体の独自の用途指定を解答するものがかなりみられましたが、ハンドブックの記載内容に沿った解答のみを正解としました。 

第7問は、ストアコンパリゾンに当たってどのようなタイプの小売店舗を対象とする調査かを問うものですが、情報源のタイプや調査内容について解答するものがかなりみられました。そのような解答は、本来、不正解とすべきですが、ストアコンパリゾンの意義を理解していることが明らかな場合、部分的な正解として評価しました。

6.組織と人事管理

全体として、専門用語についての理解が不正確で、その解説や使い方が不適切なもの、主観的すぎるものが多くみられました。日頃から主な用語について、客観的に説明できるようにきちんと理解しておくことが重要です。

また、解答を書く際にもう少し整理したうえで、書き始めることも大切です。時間を気にするせいか、考えがまとまらないままに、すぐ書き始めてしまい、結局まとまりのない解答になっているものが目立ちました。

第6問では、カンパニー制についての問題でしたが、所定の分量の解答の中で、解答するうえで不可欠なキーワードをきちんと定めて書くようにすれば、一定の得点が得られます。必要不可欠なキーワードである「事業部制との関連と相違」「資本金運用」などが欠如している解答は、大きく減点せざるを得ません。また、解答欄の分量の7割未満の量しか書かれていないものも、減点対象とせざるを得ませんでした。

第7問は、CDPの運用上の留意点を4つあげるものでしたが、ハンドブックでは5つ書かれており、そのうちの4つ書ければ満点となります。減点の多かったもので目立ったものは、留意点ではなく、CDPの欠点(短所)を列挙しただけのものや、4つの項目の内容が重複していて、実質的には2つ位しかないような解答が目立ちました。これも書き始める前に、各々どの点を書くかということを定めたうえで書けば、もっときちんとした解答ができると思われます。

7.販売計画と管理

第6問は、記述式問題であるにもかかわらず、①文章(主語、述語など)になっていない、②ひらがなの多い文章になっている、③句読点の誤用など、基本的な文章の書き方ができていない答案が多くみられました。

また、マス目を埋めるために、半分近くを問題文の繰り返しに使用している答案もみられました。

答案の内容としての不備は、①「団塊の世代」を60代以上と考えている、②高齢者に対する理解がステレオタイプであるといったものが目立ちました。

第7問は、CRMという用語の意味を正しく学習していなかったことが、正答率を下げる結果となったように思われます。CRMは流通用語であるため、様々な誌面で誤った使われ方をしています。そのことがCRMの誤解の要因となっていることも否めません。特に、ワントゥワン・マーケティングやロイヤルティ・マーケティングなど、類似する他の用語と混同して使われるケースが多くみられました。また、CRMの正式名称(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)をコンシューマーやマーケティングなどと記述する解答も少なくありませんでした。

このようなことは、類似する用語との違いを理解するような学習を行わなかった結果であると思われます。決して難問ではなかったはずです。

8.情報化

第6問は、ハンドブックからの出題、第7問は完全な応用問題でした。これら2つの問題を比べると、第6問の出来、不出来の差が大きかったようです。これは、ハンドブックをきちんと学習しているかどうかが出来を大きく左右したためだと思われます。また、第6問については、商工会議所によって正答率の差が大きく、出来の良い商工会議所と出来の悪い商工会議所の差が顕著でした。

第7問は、完全な応用問題であり、正解の許容幅をある程度大きくしたために、結果として第6問よりも良く出来ていました。「RFIDとは何か」ということをダイレクトに問う問題ではなく、その活用方法を問う問題としたため、解答しやすかったと思われます。多くの受験者が、RFIDについておおまかに理解していたと思われますが、中途半端な理解にとどまっている解答も散見されました。

なお、全体的に白紙の答案が多かったことが気になりました。



1級販売士の記述式過去問講評(日本商工会議所発表)

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