1級販売士 記述式問題講評(第35回)






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1級販売士 記述式問題講評(第35回)

第35回の日本商工会議所発表の講評は以下の通りです。以下、日本商工会議所の資料より引用します

第35回1級販売士検定における記述式の講評

1.商品計画と商品予算

小売業の商品業務は、仕入、在庫、販売の3つの主要業務から構成されています。第6問では、そのなかの仕入と在庫にかかる費用、すなわち発注費用と在庫費用について体系的に把握できているかを確認する設問でした。

基本的な理解としては、発注費用は文字どおり発注をめぐって発生する費用であり、在庫費用は商品が入荷してから顧客の手に渡るまでの在庫期間に発生する費用を指します。そして、最も重要な点は、発注費用は固定費的性格をもっており、ゆえに数量の増加に伴い1個当たりの額が小さくなるということと、在庫費用は変動費的性格をもっており、ゆえに数量の増加に伴い1個当たりの額が大きくなるというということです。ここを把握できていない解答が少なからず見受けられました。

また、発注費用は、固定費的性格があるということから、仕入担当者の人件費や仕入事務所の経費なども含まれること、在庫費用には保管費用のように目に見えるものだけでなく、保険料や在庫投資の金利、商品の陳腐化費用なども含まれるということです。これらの費用を混同しているもの、あるいはまったく触れていない答案も見受けられました。

その他、経済的発注量(EOQ)について言及している答案も見られました。EOQは、トレードオフの関係です(発注回数を減らすと発注費用は減るが、在庫費用がかさみ、また、逆も同じことが言えます)。設問は、各々の費用についての説明を求めていますので、ふたつの相違について論じる方がベターといえます。

第7問は、マーチャンダイジング・サイクルのスタートである商品計画の具体的な内容というオーソドックスな設問でした。ここは、正確な解答の答案とそうでない答案とに分かれた感がありました。「経営コンセプトに見合った商品構成」、「顧客ニーズに合致した品揃え」、「売れ筋商品の把握」、「仕入先との良好な関係」等々、一見すると妥当な解答のようにも思えますが、これらは具体性がありません。客観的に指摘できるポイントがテキストにもしっかりと記載されています。基本的な事項ですので、把握しておく必要があります。

2.仕入計画と在庫管理

第6問は、テキストに即した計算問題、第7問ではある程度経験に即して解答可能な設問という組み合わせでした。そのため、仕入計画や在庫管理に関して理解度が高く、2問ともよく理解できている答案がある一方で、どちらか1問もしくは両問題ともに不十分な解答になっている答案とに分かれました。

第6問は、GMROIを求める計算式と、具体的な数値にもとづき計算を行う問題でした。GMROIの概念が理解できていれば計算式は複数あり、平易でありますが、売上高総利益、平均在庫高(原価)、売上高総利益率、商品投下資本回転率といった概念が十分把握できておらず、白紙解答となった答案も目立ちました。

第7問は、商品ロスの発生原因とその具体的対策を問うもので、適切な商品ロスの発生原因を指摘できれば、その具体的対策は自ずと解答できます。学習到達度が低くても1つまでは比較的容易に発生原因を想定できたようです。しかし、複数となると十分な理解が必要で、正確な解答になっている答案と点差が開く結果となりました。

3.経営とマーケティング

第5問は、「スーパーセンター」に関する基本的な特徴について、確認する問題でした。受験者の多くが、ある程度の知識を持ち合わせていたようです。しかし、本設問のように、店舗構造、商品構成・・・といった具体的かつ詳細な内容について問われると正確に解答できない受験者がいました。たとえば、店舗構造といった場合、店舗面積や建築物としての特徴(平屋か高層か)といった具体的特徴を指摘することができないと、高得点は期待できません。小売業界では、日々新たな業態が出現しています。その特徴については正確に理解しておいてほしいところです。

第6問は、プライベートブランド(PB)に関する知識の確認問題でした。今日、ブランドの問題はかなり広範囲にわたり議論されるようになってきたため、PBも、その中の1つとしてとらえる必要があります。本設問はそのメリットを指摘するという問題でしたが、この場合、低価格商品としてのPBのみではなく、高級PB商品も含めて議論する必要があります。解答として求められる内容は、店舗やブランドイメージとの関係、差別化手段としての有効性、価格・コストからの検討、顧客獲得への効果、競合他社への影響、製品開発や在庫管理等への影響、などいくつかの切り口を用意する必要があります。

第7問は、加工食品の品質に関する表示規定について、「知っているか否か」の知識を問う問題で、応用力を問う問題ではなかったため、答えが思いつかず、白紙解答が散見されました。それでも、普段から食品のパッケージ横で目にする記載内容を問う問題ですので、正確には記憶をしていなくても、多くの方がなんとか思い出して書こうと思われている様子も見て取れました。「賞味期限」や「消費期限」、「原材料名」といった用語は、比較的多くの方がよくできていたと思います。逆に、「名称」や「保存方法」といった用語は、苦戦をされている方が多いという印象を受けました。

法律および基準内容を記述するものですので、記載内容は正確さも求められます。漢字の誤記、例えば「賞味期限」を「償味期限」としてしまうなどの誤りは、かなり多く見られました。気をつけていただきたいと思います。

満点を取った方はごく少数でしたが、まわりがこれだけ苦戦している中ですばらしいと思います。また、残念ながら満点を取れなかった方は、これを機会に本問をもう一度検討して頂き、記憶を確かなものとしていただければと思います。間違ってしまった問題をすぐに再検討することは、記憶をより確かなものとしてくれるはずです。

4.経営計算

第6問は、設備投資比率が企業の設備投資活動と営業キャッシュ・フローとのバランスを示す安全性の指標であることを説明し、その分析比率の捉え方が理解されているかを問う問題でした。キャッシュ・フロー計算書についての学習を基礎として初めて解答できる問題ですが、当該分析比率の高低の意味がキャッシュ・フローの観点からきちんと説明されていない解答も目立ちました。

第7問は、固定長期適合率の計算式を示したうえで、固定資産と自己資本および固定負債(長期借入金)の関係をどのように捉えるかを問う問題でした。本問においては、安全性の指標である固定比率と固定長期適合率の相違を念頭に置きながら借入金等の資金調達のあり方を説明した優れた解答が多数ありましたが、一方で、白紙の答案も目立ちました。今回の問題は、前回に続いて財務分析を行う場合の基礎的な理解や具体的な方法の説明を求めました。単に比率分析の計算方法を「暗記」するのではなく、財務分析の結果をどのように解釈すればよいのか、十分に「理解」することが今後の学習の課題となります。財務諸表の学習を基礎としない、実務上の経験にのみ頼った解答の仕方では高い得点は得られません。今回、「キャッシュ・フロー」と「利益」の違いがおそらく理解されていないのではないかと推察される解答が多くあったことが気になりました。

なお、今回は、本問に対する答案用紙が表裏になっていたためか、解答の場所が不正確な答案が多数ありましたので、設問をよく読んで解答することを望みます。

5.市場調査と立地分析

第6問は、ある都市の商業人口と小売中心性指数を求める計算問題で、満点答案と零点答案に大きく分かれました。計算式自体は単純かつ基本的なもので得点者は多いのですが、計算結果に桁違いなどのケアレスミスによる減点が目立ちました。次回試験から試験の科目体系が変わり、「販売士検定試験1級ハンドブック(新版)」による出題となりますが、どの科目においても記述式で計算問題が出題される可能性はありますので、基本的な各種指標の算式はしっかり押さえていただきたいと思います。また、記述式の場合、メモ書きのように読みにくい記述の仕方をする受験者の方がおり、採点上苦慮することがありますので、丁寧な記述をお願いしたいと思います。

第7問は、特別用途地区の特徴について問うもので、第6問に比べると難問で、満点答案は少数でした。間違いとしては、都市計画区域や高度利用地区について説明した答案が目立ちました。特別用途地区は用途地域に上塗りする制度で、既存の用途地域に反する目的を定めることはできませんが、市町村がその地区の特性にふさわしい土地利用の増進等を図るために、条例で建築物の規制を加重したり逆に緩和することもできます。また、まちづくり関連の法令や制度はしばしば見直しされることも多いので、その動向は常に把握しておきたいところです。

6.組織と人事管理

第6問は、職能部門組織と事業部制組織の特徴を簡潔にまとめる問題でした。ハンドブックでは各々の組織の解説が別個に記されていますから、両組織の特徴の基本をきちんと理解していないと回答できません。組織形態の基本は、どのような構成原理(構造)になっているかを説明することが第一ですので、回答で多かった両組織の長所と短所のみを箇条書きに記しただけでは、かなりの減点になります。また、記述された文章内容に矛盾があるものも多くみられました。いずれにせよ、細かい部分の暗記よりも、各組織の基本をきちんと理解することが大切です。

第7問は、人事考課の際に生じやすい心理的誤差傾向(エラー)を4つあげ、各々簡単に説明する問題でした。ハンドブックでは5つ記されており、このうち4つを記すことになりますので、それほど難解な問題ではありません。誤りで多かったのは、これらの専門用語をきちんと覚えていないものと、用語と説明内容の不一致、説明内容の不正確さ、などでした。人事考課に関する基本的な専門用語ですから、ぜひきちんと正確に理解していてください。

7.販売計画と管理

全般的にみて、1級ハンドブックの学習力不足を指摘することができます。出題箇所は、重要なテーマであるにもかかわらず、正しく記述されていないのは、学習力不足と同時に、暗記力も不足しているように思われます。

第6問は、第2問「月間販売計画の立て方」を受けての問題でした。したがって、第2問(ウ)を正答していないと第6問の記述はできないでしょう。すなわち、第2問(ウ)の答は、「季節指数」であるため、第6問では「季節指数を求める方法」を記述することになります。

今回の受験者の大半は、第2問(ウ)を正答していなかったため、第6問の記述は誤りが多く見られました。特に、間違って市場調査の手法を記述している受験者が目立ちました。 

第7問はカテゴリーマネジメントの機能と役割の記述でしたが、大半の受験者に学習力不足が見られました。カテゴリーマネジメントは、流通業界におけるトレンドの一つですから、それに焦点を合わせた学習が必要とされます。1級の受験者としては、カテゴリーマネジメントについての意義や役割などを十分に理解しておいていただきたいと思います。カテゴリーマネジメントの実践にあたって、最も基本とされる「機能と役割」は、1級ハンドブック学習上の必須事項であり、しっかりと学習しておくべき重要部分です。その4つの基本的分類内容を理解していなかったことが、平均点数の低さに結びつく結果になりました。

近年の受験者に共通することですが、1級の受験勉強の方法やそれに割く時間配分などを工夫し、万全な受験対策をしたうえで受験に臨んでほしいと思います。なお、ほとんどの受験者が、「購買促進」という漢字を「購売促進」と誤って書いていました。これは毎年のことです。些細なことですが、1級の受験者にとっては大きな問題だと思います。

8.情報化

第6問は、FSPにおける分析手法のうち、①デシル分析と②RFM分析の概要を問うたものでした。①は、顧客の層別化ですが、デシル(10分位、10等分)が分かっていないためか、層別化の単位が、20:80、パレートの法則,ABC分析、上位10%などの解答が多数ありました。また、購買額でなく利益貢献度(しかも顧客でなく商品)という解答もありました。②は、層別化と共に優良顧客等の選別ですが、R・F・Mが分かっていないためか、顧客属性や商品による購入内容の分析という解答が多数ありました。誤字で目立ったのは「購買」を「購売」としてしまうもので、かなり見られました。

第7問は、Web-EDI固有のメリットを問う問題でした。正答率はよくありませんでした。Web上のシステムであるメリットについての記述ではなく、ペーパーレス、コスト削減、迅速化等の解答や、技術的観点(導入投資額、商品イメージデータ等)ではなく、活用例(売上・在庫データの交換等)の記述が多くありました。また、EDIではなくWebによるEC(電子商取引、ネット売買)との勘違いがかなり見られました。



1級販売士の記述式過去問講評(日本商工会議所発表)

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